98話


 簡単な自己紹介をしたのち、女性とディックはそれぞれ別の椅子に座る。レイラの身体をそっと動かし左半身を傾けて支えた。

 入ることを許可されたスカイも恐る恐るといった風に入ってくると、すぐにディックの足元まで近づいた。そしてクルンと身体を丸めておとなしくするのだった。






「………今のところは大丈夫のようね。意識がないだけのようだし、いずれ起きてくるでしょう」

 簡単な診察ののち、医師フィジシャン診断書カルテを書きながら結果を告げる。眠っている彼女に特に異常はないことを知り心のそこから安堵した。

「そうですか。それならよかったです」

 言葉は素っ気なくなってしまうがつれてきてよかったとディックは思った。意識がないのは最初に抱き上げたときわかってはいたが、他にケガをしていないかずっと心配だったのだ。

 気づいてないだけで見えないところに実は怪我があるのではないかと心配していた。それがないだけでこんなにも安心できるとは。

 改めて医師に感謝するディックであった。





 ―――しかし。

 嫌な予感というものはどこまでも当たっていると思い知らされることになる。

 女性医師は言う、

「ところで……彼女は随分と精霊に好かれているようですね。貴方はそれについて何か知っていますか? 意識がない原因もおそらく精霊が関係しているはずなのですが」

と。

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