85話
「失礼いたします! ここで騒ぎがあったと町民からの通報により参上しました!」
衛兵たちを纏める上官が部下たちに指示を出した
こちらに来た彼は見えてきた
「……詳しく話をお聞かせください。場合によってはこちらの指示に従っていただきます」
苦虫を噛み潰したような顔になったあと、どうしてこうなったかの理由を求める。後ろについてきた衛兵たちが眉を潜めたのが、グレイの視界に写った。
なぜここにいるのかを軽く説明を行う。詳しいことを省いているのは、一重にこれ以上面倒事に巻き込まれないため。それだけの話だ。
その少し後ろでは
説明を聞いた上官は少しの間だけ目を伏せて考える仕草をした。そして、
「何はともあれ、ご協力ありがとうございました。また伺うこともあるかと思いますが、ひとまずこれで終了いたします」
敬礼をしながら感謝の言葉を紡いだ。
「いえいえ。このようなこと造作もないのですにゃ。いつもお疲れ様にゃ」
世間体の世辞をグレイが返すと、
「ありがとうございます。後程また傭兵組織に報告をさせていただきます」
こちらも軽く世辞を返してくる。
「心得ましたにゃ。では、帰らせていただくにゃ」
グレイは頭を下げると、後ろへと背を向けて歩き出した。
近づいてきたのが分かったのかスカイの耳がぴくりと動いた。舐めるのをやめ、くるりと頭がグレイの方に向く。
「……戻るのにゃ。とりあえずその娘をお前に乗せてやるからふせるのにゃ」
言うやいなや、グレイはレイラの側にいくと彼女の片腕を自身の肩に回した。そして、背中に右手を回し両膝のしたに左腕を通し、グッと持ち上げた。
瞬間、炎にも似た熱の暑さがグレイの腕や胴回りを襲う。
「……っ」
暑い―――が、持つことができないほどではない。歯をギュッと噛み締めしっかり抱えあげると、すでに伏せていたスカイの上に彼女を横たえた。下にゴロリと落ちたりしないよう慎重に慎重に下ろしていく。
それが終わると散らばっていた彼女の荷物を集めた。といっても荷物は野菜の入った大きな袋だけでほとんど回収するようなものはなかったが。
大きな袋からはころころとキャラムとトマの実とサンの実が転がり落ちてきていた。ほとんどは袋のなかに入ってるようだったが、入りきらなかった分が出てきてしまったらしい。
落ちていた分の半分ほどは潰れて形すら残っていなかった。それどころか土にまみれて汚くなっている。すごくもったい無いが、こればかりはどうしようもないだろう。
残り半分はというと土を被ってはいたが洗えばなんとかなりそうなくらいのものだった。無事なものが拾い上げ、しっかりと袋のなかに入れていく。
それを背中に背負うと、
「………行くにゃ」
スカイに一言告げて歩き出した。
(………何故にゃ? 何故、この女はこんなにも体温が暑くなっているにゃ?)
・・・一つの疑問を、グレイに残して。
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