78話

「っ何をやっているのにゃ…………っ!!」

 焦ったグレイの静止も聞かず、白翼猫ブランリュンクスは毛を大きく逆立てて牙をガリガリと鳴らしながら大きな唸り声を上げた。

 ブワリと広がった白い翼が、その白翼猫の身体をさらに大きく見せる。いつの間にかあの客人がかけていた魔法は消えて、元の通常の大きさに戻っていた。




「な、なんだぁ!?」

「どこだ、どこから聞こえる!!」

 いきなり聞こえてきた大きな鳴き声に、恐怖心に駆られながらも戦闘態勢に入る兵士たち。

 だが場所がこのたったの2メトルほどの幅の狭い路地裏だ。構えた槍の柄の部分が壁に当たったりして動かしにくくなっていた。

 さらに槍をどうにか動かそうとして穂先が仲間に当たってしまうものだから、

「おいどうなっている!?」

「な、お前がそこにいるから使いにくくなるのだ!!」

「おい当たっているぞ!! 廻りに気を付けやがれ!!」

 ―――すでにそこは内輪揉め状態となっていた。




 そんな状態になっている彼らの所へ白翼猫スカイは一度態勢を低くすると、弾丸のごとく飛び出すように地面を蹴って兵士たちに近づいた。

 肉食動物の特性である肉球のおかげか、その走りには音がない。おかげで兵士たちに直前まで気づかれることなく近づくことができた。



 ―――そして、

「っ!? おい――――――」

 一人の兵士が彼女に気付き、

「あ? どうし――――――」

 もう一人が気付いた頃には。




 すでに数人が、彼女の爪と牙によって地に倒れていた。

 白翼猫は倒れている一人の兵士の頭に片足を置くと、また大きく唸り声を上げた。そして、いきなり現れたことに怖じ気づく彼らを掻き分けながら、彼女は何かをそこから引っ張り出していく。



 なかから出てきたのは・・・気を失っている、あの客人だった。

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