61話

 露台バルコニーから見える城下の景色はほの暗く、点々と小さな灯りが見えるのみ。

 ほとんどが魔力光マジックライトで遠くかすかに見えるのは篝火だ。

 とはいえ篝火があるのは城下町の門の廻りだけだから小さいのは当たり前、だがしかしそれが見えるこの青年はとても視力がいいといえる。




 じっと外を見ていた青年だが、不意に部屋の中に顔を向けた。それと同時に音をたてず人影が彼の前に突如として現れる。

 その人影は静かに青年の前に片方の膝をつくと、淡々と言葉を紡いだ。表情少しも変えることもなく淡々と。話し終われば頭を下げ、また音も無く消えていった。

 聞き終えた青年は目を閉じてフッ・・・と微笑すると、部屋の中へと入っていったのだった。







 ―――いつの間にか夜の蒼空にあった星が雲に覆われて全て消えていた。まるで大きな獣か何かに喰われたかのように。

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