44話
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この頃レイラは夢を見るようになっていた。
いや、夢と断言できるのだろうか。どちらかといえば夢というより―――現実に起きたことが幾度となく繰り返されるような、そんな悪夢のようなものだった気がする。
現れる
その夢を見るたびに彼女は思う。
―――どうして自分は狙われたのかと。
特別な力がある訳ではない。ましてや役人などに捕まるような犯罪を自分が犯した訳でもない。村から出たことがほとんどないのでなんともいえないが―――それでも捕まる理由なんて、狙われる理由なんてどこにも存在ないとレイラは思う。
もう一つ、レイラには思うことがあった。
もし狙われるようなことを自分がしたと仮定して―――『どうして周りを巻き込んでしまったのか』と。
たくさんの人がいた。仲良しだった友人、たくさんの思い出がある学校、見慣れた景色がそこにあったというのに。
そう思うたびに周りの景色がどんどんペンキのように黒く塗りつぶされていった。そして荒れ狂ったような風が彼女を包んだ。
その風からはたくさんの声が聞こえた。
その全てがどれもこれも憎悪と憤怒の怨嗟の声ばかりで。時折誰かの泣いているようなものも聞こえてくる。
それら全てがレイラに対する悪感情で。そのどれもが彼女の住んでいた村の人たちの声だったのだ。
レイラは耳を塞いだ。廻りの音も自分の声も、呼吸する音ですらも聞こえないように力をいれてギュッと。知っている人の恨み辛みを聞きたくなかったから。
それでも声は聞こえた。塞いでも無意味とばかりに頭へ響いてきた。
―――夢だとはっきりわかっていても、やっぱり嫌で仕方がなかった。こんなものをいつまでも聞きたくはなかった。
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そうして悪夢に魘されるたびに―――なぜか現実の彼女の周りで嵐のような風が激しく巻き起こっていた。今回彼らが見たのは、その現象が起きたあとの光景だったのだ。
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