41話

 家の中から現れたのはここら辺では滅多に会うことのないエルフ族の青年―――もとい、言わずとしれたディックで。

 突然の出現に四人は戸惑いと驚きを隠せない。なぜならエルフ族のなかには他の種族と関わることを嫌う者たちが多いから。めったに会えない種族として有名なのである。


 それからさらに彼らは驚くことになった。

 彼が現れたことでなんと人に慣れることのない幻獣族の山翼猫リュンクスが、それも白翼猫ブランリュンクスという希少種がこちらへの攻撃をやめたのだ。そして甘えた鳴き声を上げながらエルフの青年に体を擦り寄せたのである。

 



 喉元をしばらく撫でてやっていたエルフの青年は、ようやく四人に目を向けた。

 向けられた瞳にはこちらに対する敵意は一つもない。だからか、いつの間にか四人は戦闘体制を解いて闘う意志がないことを示すために各々の武器を地面に置いていた。

 無理もない。まさか目の前で幻獣とエルフが戯れているのを見ることになるなんて夢にも思わなかったのだから。



「……で? お前たちはうちに何しに来たんだ」

 始めに口を開いたのはエルフの青年だ。片方の手はスカイの頭の上でゆるゆると撫でていて、もう片方の手は腰の方に忍ばせている。彼ら四人からは見ることができないが、腰には一振りの剣が隠されるように装備されていた。

 四人は一度顔を見合わせた。そして誰からともなく頷くと、

「俺たちはランデル傭兵組織ギルド支部・『流星の守人』のものだ。ここの村が一日にして消滅したと言う緊急の依頼があったので、その調査のためにここに来ている」

 代表するように剣の青年が言葉を発した。

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