26話


 一体誰が刺されたのか、その瞬間をレイラははっきりと見ていた。


 膝が恐怖でガクガクと大きく震える。思うように足に力が入らず、思わず座り込みそうになるほどに。何が起きたのか分からなくて、ただただ混乱だけが頭を埋め尽くした。

 そのくらい今起こった出来事がとても衝撃的で―――あまりにも残酷過ぎた。



 気付くと目を見開き、意図せずに言葉を吐き出していた。






 「…………?」

 と。






 そう。

 男たちの凶刃によって急所を刺されて倒れたのは、これまでに何度も会っているレイラの家の隣の家族の男性だった。

 ―――つまり。


「っ義父おやじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 幼馴染みである、ディックの父親だったのだ。

 ディックの大きな叫び声が村じゅうに響いた。






 幼馴染の父親の胸の刺し傷からは赤黒い液体モノが次々と溢れ、地面に倍ほどの大きな溜まりをつくっていて。その光景は誰が見ていても思わず嘔吐しそうなほど悲惨で―――そして、あまりにも惨烈なものだった。

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