第二章 真実 2
屋敷での昼下がり。紅茶をすすりながら、中庭でビュート男爵がエマとチョコ、バニラを集めて、ゆったりと作戦会議をしていた。
それは、実によく練られた作戦であった。
今や、ホロウィッツ派の権力はライラック地方の南部にまで及びつつある。しかし、それはビュート男爵側にしてみれば、反撃のチャンスだと言うのだ。
大胆にもビュート男爵は、”パトリック暗殺作戦”を持ちかけた。最初、エマとチョコは戸惑ったが、ビュート男爵の説明を聞いて目から鱗が落ちた。
「まずはメアリー王女。誰を婿に迎えるかと噂になったとき、もう一人の婿候補であるペペ隊長が暗殺された」
エマがうなずく。
「真相は闇の中だが、続けて即位したばかりのパトリック皇子が何者かに暗殺されたとなれば、民衆だけでなく、城内でもメアリー王女に”魔女”の嫌疑がかかるだろう」
男爵はチョコを見つめる。
「そして、時機を見計らって、魔女の”使い”の象徴とされる黒猫(チョコ)を街のあちらこちらで出没させる」
エマがチョコを指差す。
「急に黒猫が目につくようになった城下で、民衆は焦燥にかられるはずだ。それがライラック地方の民族性である」
魔女の使いと言われて、チョコは急に自分に見えない力がみなぎったような気分になった。
「そこで、ホロウィッツ卿は、事態の収集を図るだろう。しばらくして、大臣や街の人々は、メアリー王女を魔女として畏れ、新しい王女を立てるよう望むはずだ」
エマが不安の表情を浮かべる。
「新しい王女の候補となれば、メアリー王女と血のつながった姉のエマしかいない」
ふいに王家の血を引く隠された事実を思い出し、エマは姿勢を正した。そのせいで、ますます大きな胸が強調され、ビュート男爵は思わず咳払いをした。
ビュート男爵の咳払いをエマは気に留めなかったが、男爵が自分の胸をチラ見したのは分かった。
(男爵のエッチ………)
「しかし、勝ち気な性格のエマを王女に迎えれば、自分の思い通りにならないかもしれないとホロウィッツ卿はためらうはずだ」
エマはなぜか得意げである。
「そこで、一週間ほどしたら、エマがホロウィッツ卿に接触するのだ」
ビュート男爵は、王家の血筋を持つエマと魔女の使いとなったチョコを交互に見渡した。
「できるか?」
「うん!」
エマとチョコの返事がきれいにハモった。
すぅぅぅぱぁぁぁ、アダマンタイト! 深山鬱金 @youyi8282
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