美味が為に、爆発す─2─
わん! わん! わんわん!
うぉふ! うぉふ! ばうわう!
「センパイ! 何て言ってるんすかこの子達!」
「さあ。でも喜んでるのは確かね」
「可愛い! でっかい! めっちゃもふもふしてる!」
「そうね」
「でも暑そう! 大丈夫なんすか!」
「今度サマーカットしに行くんですって」
「へーーーっ良かったねえ! よしよし! 絶対可愛いんだろうなあ!」
竜峰家有する立派な庭の、大型犬も余裕で足を伸ばせる大きな柵の外に、その日、小柄な犬が一匹増えた。
──のではなく。ただ単に、テンションが上がりすぎた咲夜がそう見えただけの話。
お泊まり用の荷物を置き、軽く館内の案内を受けてから、手土産のスイーツをお茶菓子に歓迎の紅茶を頂き……しばらくして今に至る。心なしか彼ら──ゴールデンレトリバーのニコル、シベリアンハスキーのジェーン──も、咲夜をお客さんというより仲間目線で歓迎しているように思えた。
という訳で今、すぐ側には天華しかいないので、咲夜はいつもの羊の皮を思いっきり剥ぎ取って楽しんでいる。要するに、幼い狼っぷり全開で過ごしているということ。そんな風にジャーキー片手にきゃっきゃと喜ぶ咲夜の姿を、最初こそ天華もそれはそれは愛おしそうに眺めていたのだけれども……
「ねえ……瀧本さんこそ、暑くない? もうかれこれ三十分はこうしてるけれど」
「いやいや、夏なんで! そりゃ暑いっすけど! 全然へっちゃらっす!」
「……」
──何だろう、段々面白くなくなってきた。
なんて、天華のモヤモヤさに、咲夜わんこは気付けない。気付かない。
「お手! お代わり! ま、待て……よしっ! わあ、スゴい! 偉いなあ、お利口さんだねー、ニコくん、ジェンちゃん!」
「はっ!?」
「ん?」
「い、いえ……名前、で呼ぶのね、と思って……」
「……? 何かダメでした?」
「ダメってことは、ないけど……」
──悔しい、私だってまだ、下の名前で呼んでもらったことないのに……!
なんて、天華の胸に燻り始めた嫉妬の火種に、咲夜わんこは同じく気付けない。気付かない。
「あのー、柵の中に入るのはさすがにまだ早いですかね」
「え……」
「ボール遊び、してみたくて……!」
目をキラッキラに輝かせ、柵の中を指差す咲夜。普段のツンケン具合からのギャップにこれまたガツンと理性を揺さぶられる天華であったが、いやしかし待て、今ここで仰せのままにとこの子達を完全に野放しにさせてしまったら……
『わー! きゃー! あ、こいつぅ、今ほっぺナメたろ? この〜! わしゃわしゃの刑だ〜〜!! あはは、あはは、あははは───』
「…………」
「センパイ?」
その時、何故か急に目元に濃い影を落とした天華が、ゆらりと柵に近寄った。そのまま静かに彼女と並び立ち、無言でけむくじゃら共(!!)を……見つめる。
──ギン! ……否、睨み付ける?
びくっ! クゥ……
きゃいん! ばたばた……!
「あ、あれ? どうしちゃったんだろ……小屋ん中に帰って行っちゃった……」
「ああ、きっと、久しぶりのお客様が嬉しくて、はしゃぎ疲れたのね。でも、そろそろあの子達も休憩させようと思ってたところだったから、ちょうど良かったわ。さ、私達も部屋に戻りましょう」
「む……。確かに、アタシに合わせて無理させてちゃ可哀想っすよね、暑いし……そうします。ニコくん、ジェンちゃん、またあとでね!」
と、名残惜しそうに去る咲夜の後ろで、最後にもう一度、ぬらりと庭を振り返る般若。わんこ達にとってカースト上位である天華お嬢様に、突然訳もわからずあんな青い炎を見せ付けられたら……そりゃあ怯えてそそくさ小屋に引き返すだろう。それこそ、尻尾を丸めて。
悲しきかな。愛はたまぁに、自己中心的なのだ。……わん。
*
ところで、天華の部屋は、年頃の女の子にしては物が少ない方だと思われる。もちろん、普段は寮暮らしなのだからこっちにたくさん残しても──というのもあるのだが、そうでなくてもシンプル イズ ザ ベスト。だがしかし、そのシンプルひとつひとつがスーパーリッチなのは言うまでもないだろう。
更に、それに加えて広い。子供部屋にしては……まあ広い。何せ咲夜はさっき初めてここに足を踏み入れた時、天華の個室でなく来客用の待合室か何かに通されたと一瞬本気で思ったくらいのだ。
「さ、座って。瀧本さん、喉渇いたでしょう?」
「ありがとうございます……って、なんでもう既に飲み物が用意されてるんすか?」
「ああ。さっき佐久間さんに頼んでおいたから。私達が部屋に戻るタイミングで用意をしておいてって」
「へぇ……な、何かほんとに一流のホテルみたいすね」
「……住みたくなった?」
「へ? ……いやそれはない」
とまあいつも通りの会話を挟みつつ、両名はテーブルに向かい合うようソファに腰を下ろした。そして咲夜は、改めてじわりと驚愕する。
(……あ、ていうかソファって、一個人の部屋にも存在するもんなんだ……)
普通レベルならまだわかる。けれどもここまで立派なものは、それこそリビングや、大型ショッピングモールの待合いスペースや、校長先生の一室くらいにしか置かれないものだと勝手に思っていた。もしこのサイズの家具が自身の部屋にもあったなら、勉強机と本棚とお布団とで完全にスペースがなくなるだろう。想像すると少しゾッとした。
「夕方になって日差しが落ち着いたら、一緒にお散歩に行きましょう」
「散歩! はい!」
素晴らしい、夢にまで見た犬の散歩に行けるなんて! あまりの嬉しさについつい私怨を忘れてにぱっと笑うと、フルーツウォーターを注ぎながらのぼせたように固まる天華と目が合った。
──あ、やばい。さすがにちょっと色々ユルすぎたかも……
頭を冷やすのも兼ねて、注がれたそれを一気飲み。
「……」
「……」
その間、何とも言い難い、気まずい空気が流れた。
(狙われてるの忘れるって、アホか、アタシ!)
と、そこへやはり、火が付いてしまったらしい天華が追従する。
「瀧本さん、私の何がダメ?」
「……は?」
「逆に、何が良ければ、私を好きになってくれる?」
「いやいやいや。ちょっと、何すか急に」
「ちっとも急じゃないわ。少しでも早く“その時”が来るように、出来うる全ての努力をしておきたいの」
「そ、そう言われても……」
相変わらず斜め上からどストレートだなあ、と考えながら、お土産のケーキをつつきだす咲夜。
「……はあ、言っちゃっていいんすか?」
「何かあるの?」
「どんな事でもいいなら……」
「もちろん」
言質は取った。ならば遠慮なく。相手の顔も見ず、コポコポとおかわりを注ぎながら。
「や、まあ正直、そんなタイプの顔ではないっすかね……?」
「───!!?」
想像通り、ガガガーン! と超絶綺麗系美人に雷が落ちたのが見て取れた。先程とは全く別の意味で静止させてしまったが、どんな事でもいいと今し方言われたばかりなのでこちらに非はないはずだ。
「あ、ごめんなさい、センパイのことはめちゃくちゃ美人だと思ってますよ? アリかナシかで言ったら断然アリ。ほんとに芸能人になったらいいんじゃないかって思います。でも残念でした! アタシ、もっと素朴な人がタイプなんで」
「……そぼく……?」
「一緒にいて落ち着くというか、変な片意地張らんで済む、みたいな……言いたいことわかります?」
「…………」
「センパイ、例えば、ハンバーグって美味しいっすよね? カレーライスも美味しいし、お寿司も美味しいし、ラーメンも美味しいっすけど、それでもセンパイが一番好きなのはスイーツでしょ? それに似た感じです。オーケー?」
我ながらわかりやすい例えで諭してやった、と咲夜はニヤリと目を細めた。さすがのこの変なセンパイも、大好物のスイーツを引き合いに出されたら納得せざるを得ないでしょう!
「…………瀧本さん。メインとデザートを同じ土俵で比べるものではないわ。心身共に健康的に暮らしていく中で、それぞれに大事な役割があるのだから」
「なんつーアンタらしい反論……」
若干感心しかけて首を振る。ここで引いたらせっかく与えた大打撃が無に還ってしまうではないか!
「とにかくっ。センパイは、アタシの好みからは外れてるんです。それだけは確かです。覆しようのない事実って奴です!」
「……覚えておくわ」
「ふっ。どーぞ」
「瀧本さんが、私の容姿を認めてくれているという事実も一緒に、ね」
──ははぁ、さてはこの人ちょっとバカだな?
咲夜はガクリと肩を落とし、天華の微笑みを全力でスルーした。何という楽観的な捉え方だろうか。とは言え、今回ばかりは自分の失態でもある。何せ咲夜自身から口に出してしまったのだから、『めちゃくちゃ美人だと思ってる』と。『アリかナシかで言ったら断然アリ』だとも。
深い意味はなかったにせよ、これぞまさに、口は災いの元。もしかしたら、これからは何を聞かれても黙っていた方がいいかもしれない。沈黙は金、雄弁は銀……
「総評的に、とても今後の振る舞いの為になるお話だったわ。ありがとう」
「……」
「外見を褒められる機会は何度もあったけれど、今程私の心に残る言葉はなかった。褒め言葉って結局、何を言われるかより、誰に言われるかが大切なのね」
「……」
「瀧本さん?」
「……」
「聞いてる? 瀧本さん?」
「……」
「…………サク」
「勝手に人をあだ名で呼ぶな!」
「やっと返事してくれた」
うっかり怒鳴ってしまっても、グラスで優雅に喉を潤しながら「一度呼んでみたかったの」とどこまでもニコニコ顔を崩さない天華に、露骨な溜め息を返す。
「てか、何でアタシのあだ名知ってんすか?」
「前に、お店で叔父様が」
「ああ……トラ叔父さんか」
「ええと、この機会に」
「ダメです」
「……まだ途中なのに」
「『あだ名で呼んでいいか』でしょ、どうせ。絶対ダメです」
「今みたいに二人きりでも?」
「どんな時でも、です。許す理由がない」
体ごとそっぽを向いて不機嫌さをアピールしても、まるで暖簾に腕押し。
「可愛いのに、サクって」
「……」
「下の名前もダメ?」
「嫌です」
「……ふう、わかった。諦めるから」
──今は。
なんていう天華の心の声が聞こえた気がしたが、そんなものは丸ごと無視してやった。最初から互いの意見が平行線を辿っていたから、今こうして“勝負”をしているのだ。気にしないでいいものは気にしないでおくに限る。
(ていうか、こっちの情報ばっか知られてくのって何かシャクだな)
ここは話を変えてみよう。
「ところで竜峰センパイって、何か苦手なものとかってあるんですか」
「! 貴女の方から質問なんて珍しい。どういう風の吹き回し?」
「いや別に? 何となく聞いてみただけっすけど」
「そう……ふふ。苦手なもの、そうね。苦手なもの……苦手、苦手…………」
「…………うわー、まさかないってオチっすか……? 聞いて損した……」
「い、いいえ、そんなことないわ。苦手なもの……そう、人付き合い! ほら、ね?」
「いや、ね? って言われても。そうなんすか? 上手くやってるように見えますけど」
「ああ、それは私が來夢と行動することが多いからでしょう。あの子のコミュニケーション力のおこぼれを頂いてるだけで、実際はみんな私とは、一歩引いたところで接しているわ」
「ふぅん。高嶺の花にも色々あるんすね」
「とは言え、私の方も周囲を遠ざけてる節はあるから、おあいこ様なのだけど」
「へぇ?」
「その……実は前々から、努力を認めてもらえないことが多くて。人より少し“α”の血が濃いからって、ただそれだけで謂れのない妬み嫉みを受けたこともあったわ。だから、自分で交流の輪を絞って過ごしていく内に、貴女のような社交性は段々なくなっていったって訳」
「ああ、そういや隠れ不器用なんでしたっけね」
その時、以前、來夢も交えて生徒会室に集合した時のことを思い出した。咲夜の為に小論文という名のラブレターを書いてきた天華に、來夢が泣きそうな顔でこう言っていたのだ。「貴女が隠れ不器用なのを忘れていました」と。
咲夜とて本当はあまり他人と馴れ合いたくない方だが、孤立するのは得策でないと踏んで普段はそつなく振る舞っているだけだ。
(意外なところで共通点を見つけちゃったな)
だからといって同調するつもりはないが。
……と、同じ思い出を想起したのか、それとも些細なやりとりを覚えられていたことが嬉しかったのか、天華は少しだけ頬を染めて頷いた。
「正解。でもいいの、もう見つけたから」
「見つけた? 何を?」
「ようやく出逢えたのよ。ずっと探し求めていた、本当の意味で私を真っ直ぐ見てくれる人に。だから……他の人のことなんて、もうあまり気にならないの」
うっとりと目を細めた彼女は、それはそれは幸せそうに語りを終えた。一体全体誰のことか全くわからないけれども、ああ、ちっとも見当すら付かないけれども、他でもない天華がもういいと言うのならもういいのだろう。元より、お悩み相談のつもりで話を振った訳じゃないのだし。
(やれやれ、苦手って、弱点的な意味で聞いたんだけどな。いざという時にそれを出して逃げる、っていうのに使いたかったのに……嫌いなものを聞けば良かったかも。まさか『人付き合い』を盾にする訳にもいかないしな……いや、センパイの苦手そうな人と仲良くしておくっていうのはどうだろう?)
そうやって近寄り難いコミュニティを築いておく作戦は、とりあえず頭の片隅に置いておくとする。
……そんなことより。
そんなことより、実はさっきから視線が熱い。
真正面からのキラキラが痛い。
ロクに目を合わせられない。
何故なのか。
まさかとは思うが、今話された“ようやく出逢えた真っ直ぐ見てくれる人”というのは、本当の本当に“瀧本咲夜”を指していたりするのだろうか。
全く心当たりがないのに。
あえて考えないようにしていたというのに。
「…………いやあの。念の為言っときますけどアタシ、善人とかじゃないっすよ、全然」
「ええ、知ってる」
「基本的に自分のことしか考えてないですし……」
「うん」
「アンタの事情とか、大して興味もないんすよ?」
「それも知ってる」
「……さっきのことだって、正直何のことかさっぱりですし……」
「ええ、でしょうね」
「…………」
咲夜は思考を放棄した。どうやらもろもろ面倒くさくなったようだ。
組んでいた腕をそのまま頭の後ろに移してだらしなく背もたれに寄り掛かる。何故だかこの短時間に異様に肩が凝った気がして、そのまま首をまふっと後ろに預けた。高い高い天井の先に、ロフトのような空間と天窓が見える。日当たり良好。こんなに良い部屋なのに、部屋主が寮生だから普段は空っぽなんだよなと考えると、何だか勝手にもったいなさを感じてしまったり。
と、ややあって体勢を元に戻すと、天華の視線が僅かに下方──咲夜のデコルテ辺りへ向けられていたことに気が付いた。
「……?」
居心地の悪さを感じ、首筋をさすりながら体勢を起こした咲夜に、ぽそりと天華が問う。
「もしかして瀧本さん、私に好かれてる自覚、ない?」
真剣な声色だった。突拍子のない質問の割には。
「どういう……?」
「それと、前に私が貴女に伝えたこと、覚えてない?」
「どれのこと?」
「貴女からとてもイイ匂いがするとか……」
「あ、ああそれね。覚えてますけど、気のせいじゃないっすか? だってウチ、ケーキ屋ですし。お店の匂いが少し移ってるだけでしょ、どうせ」
「……思った通り、その程度なのね」
その時、天華の雰囲気が固くなったような気がして、咲夜は眉を潜めた。今の口調に、どことなく責めの節を感じたからだ。
それがどうした、だから何だ。そう言い返そうとして──
「納得したわ。瀧本さんが、どうしてそんなに無防備なのかが」
「それがどう──ッエ?」
「無防備、って言ったの。今みたいに首や鎖骨を無意味に晒したり、たまにビックリするくらい至近距離まで詰めてきたり。前から不思議に思っていたのよね……どうして私の喜ぶことばかりしてくれるんだろうって。しかも軽率に」
「え、いや、え……そん、な事……?」
「ある」
目が“マジ”だ。今逆らうのはよしておいた方が身の為だろう。
「あの時のラブレターは読んでもらえたのかしら?」
「……い、一回だけ。ちょっとそのぉ、やっぱりラブレターっていうにはアレは、アタシには難しくて、ですね……?」
「なるほど。あ、いいの、大丈夫。自分でも、今なっては問題点だらけだったと反省してるのよ。次回には必ず改善するから」
「じかい」
そもそもあるのかよ……そう呆然としつつ、咲夜は今言われた事の意味を自分なりに咀嚼した。
“好かれている自覚”。それは、確かに薄い。それこそまさについさっき、タイムリーに似たような事態が起きたばかりだ。では次に、何故そんな事になってしまったのだろうと考えてみる。
「あー、もしかしたらっすけど……あんまり信用してないのかも、センパイの“好き”。てか多分そう」
Ω色が濃い咲夜にとって、αに「一目惚れ」だと言い寄られてきた回数はギリギリ両手で数え切れないレベルのバッドイベントだ。その度にフラグをへし折り、その内にαを見限り、その流れで“普通”に憧れてきた生き方を今改めて振り返ってみると、申し訳ないが例に漏れず天華もご勘弁願いたい存在で間違いない。そしてそれは、告白されたその日にオブラートにも包まずぶちまけた真実だ。
(いやほんと、よくあんなやり取りした相手にここまで執着できるよ……)
アタシだったらショックで寝込むけどな。いや、それか逆ギレして大嫌いになるかも。なんて他人事のように思いながら、もう一度喉を潤し、グラスをそっとテーブルに戻す。中で氷が踊った音が涼やかに響いた。
その時だ。
「じゃあ、これからは、もっと努力する」
足元に影が差した。いや違う、咲夜の全身を覆うようにして、それはふわりと掛かった。見上げれば、向かいに座っていたはずの天華がすぐ目の前に立っている。
「どれだけ私が、貴女に堕ちているか」
跪かれ、気付く。彼女の潤んだ瞳に。
「どれだけ私が、貴女を手に入れたいか」
手を取られ、驚く。彼女の純粋な熱さに。
「どれだけ私が、貴女に恋をしているか───」
伝染した熱で心臓が跳ねる。
一国の姫君とも相違ない美少女が、平民であり続けたい美少女の手の甲に、そっとキスを落とす。
「瀧本咲夜さん、それを貴女に信じてもらう為の努力を、私は少しも惜しまないと誓うわ。瀧本さんが私の、竜峰天華の“最初”で“最後”……好きなの。大好き。本当に、本当に、本当に、貴女が欲しい。貴女だけいてくれれば、それで良いの……どうか、それだけは、わかってください」
告白されたあの日を思い出させる、切実さ。
それでも咲夜は、沈黙を貫いた。
否、貫かざるを得なかったのだ。
何故ならそれは、不安になった天華が上目遣いで、「……少しは伝わったかしら?」と控えめに伺った時には既に、本人は高熱で目を回しており……ぷしゅーと湯気まで吹き出して、つまりはノックアウト状態だったから…………。
「え……まさか、ね、寝た、の……?」
竜峰天華、ガムシャラな初恋パワーで一本!(※勝者は絶賛混乱中)
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