言葉が為に、口閉ざす―0―
一度目は 偶然。
二度目は 奇跡。
三度目は 運命。
なんて言葉をどう思う?
ああ確かに、珍しい事が連続して続けば、もしや何か意味でもあるのではと、そう感じてしまっても仕方ないのかもしれない。だからこそそんな言葉が生まれたのだろうし。何やら少し、神秘的だし。ああ、そうだ、彼女の場合もそうだった。
例えば、共通のマイナーな趣味を持っていたり。逆に、考え方がまるで正反対だったり。ふとしたタイミングで、そっと手が折り重なったり。そんな風に、一見些細で、でも衝撃的で、側から見れば何でもないかもしれないようなちょっとした
これまで押し込めていた好きな気持ちをいつでも共有出来る楽しさ、喜び。
時には正反対だからこそ、お互いをカバーし合える心強さ。
転がったペンを同時に取ろうとして、触れ合った指先のぬくもり。
回数だけで言えば、それこそ数え切れないくらいときめいてきた。その度に恋の芽はすくすくと成長し、少女の在り方を形作ってゆく。自分と彼女が運命の間柄だなんて、そこまで大それた事は考えなかったけれども……でも、そうだったらいいなとは何度も考えた。夢を見たのだ。そう、何度も、何度も、何度も……それくらい、少女は、彼女の事が好きだった。
『気になる人が、出来たの……』
───ある時、突然、そう告げられてからも。
一度目は 偶然。
二度目は 奇跡。
三度目は 運命。
なんて言葉をどう思う?
『……一番に伝えておきたくて』
恥じらいに潤む瞳。赤らむえくぼ。不安と信頼で揺れ動く心。それらを初めて見た少女の胸に、数々の思い出が走馬灯のように甦っては消えていった。……その時、気が付いたのだ。
例え趣味が同じで考え方が真逆でも上手に支え合えてふとしたタイミングで手と手が触れ合っても。
何十何百何千何万回の“運命”を信じていたとしても。
『応援、してくれる……?』
それが自分だけなら、無意味なのだと。
相手にとっては、何十何百何千何万回の“偶然”でしかなかったのだと────。
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