望まない会合への誘い
「グッドモーニング~、寝ぼすけさ~ん?」
「……とっくに起きてますよ」
大学へと向かう道すがら、かかってきた電話に冷たく返してもそれすら笑いの種になるようで向こう側では大きな笑声が響いている。
「いやいや昨日は遅くなったみてえだから寝てるかと思ってよ?そういえば学生さんだったよな、真面目さんだね~」
「芳樹さん……やってるんですか?」
笑い袋のような声をあげる男に精一杯の嫌味を伝えるが、
「いや~?俺はいつだって自然(ナチュラル)だぜ?」
通じないことはわかっているので今更反応はしない。 ただ寝不足のせいで頭に不快な衝動が沸くだけだ。
『う~ん?芳樹君、どうしたの~?」
不愉快な声の後ろ側でフワリとした洋子さんの声が聞こえてもそれは変わらない。
というかカップルで居たのかよ。 いったい『なに』してたんだよ。
「なんですか?用件は昨日済ましたでしょ?これから講義なんで早めに済ましてくださいよ」
「おお悪い悪い、それじゃ早速……今夜会合をやるからよ?参加してほしくて連絡したんだよ、俺達の為に頑張ってくれた友和君には特別にスペシャルミドリを用意してるぜ」
「そんな用事ならメールでもいいでしょうが」
「寂しいこというなよ、大事な仲間の友和きゅんの声を聞きたくて芳樹、頑張って早起きしてかけたんだよ~?」
『芳樹君!電話の相手誰~?』
芳樹さんの猫なで声に彼女である洋子さんの抗議も共に耳に入ってきた。 またあの胸焼けするような光景を思い出して吐き気がしてくる。
「悪いんですけど、今日は……」
「ああ、白音ちゃんからはOKもらってるからよ、それじゃアデュー」
「えっ、ちょっと待っ…」
通話はあっさりと断ち切られた。
再度掛けなおすが、例の『アドバ~』の留守電に切り替わってしまう。
クソっ! 芳樹さんに抗議しても意味がない。
白音に直接言わなければ。 昨夜のあの謎の依頼の詳細がわかるまでは緑友会には関わらないようにしようと。
そういえばあの後、白音はどうしたんだろうか?
昨夜の出来事が強烈過ぎて今の今まで忘れていた。 慌てて連絡を取ろうとするが『お客様の番号は電源が入っていないか電波の……』無常なアナウンスが流れる。
仕方が無い。 大学に着いたら白音を探して直接話をしよう。
そうと決めれば急がなければ…。 爽やかな朝だった『今』を振り切りながら大学へと走り出す。
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