第35話◆2048年

人は愚かな生き物だ。

大事なものは失ってからでないと気付くことができないのだから。


人は生きるか死ぬかではなく、

支配するために殺しあう。


憎悪、嫉妬、怨恨、金品、地位、名声、見栄、事故、絶望、道連れ、興味、快楽、なんとなくなど、

様々な理由で人は人を、己をも殺す。



それもなぜ死ななければならなかったのか、と悔やまれる人が死んでしまうことが実に多い。



憎まれっ子世にはばかる、という言葉があるがその通りだ。


図太くてズル賢くて凶悪な奴が生き残る世の中。


うまく忖度した奴が出世し、制覇する。自分勝手でわがままで周りを振り回してばかりの奴が得をする。



優しくてお人好しな人は、周りに気を使い続け人に譲り助けて、自己犠牲の末精神及び肉体を滅ぼす。ことが実に多い。


ただでさえ日本の人口は減少している。


事故、病気、殺人、寿命により人は死ぬ。


醜い争いを続ける人種がどんどん増えていく。



人は女性からしか生まれることが出来ない。

それなのに、女性の社会進出が一般的になるということは生物学的に、妊娠中の体調管理、家事や育児を行うにあたって確実に不利であり、つまり人は絶滅に向かっているのだ。


その為、人類滅亡の危機対策として、

人は機械との共存、融合の道を選んだ。


人は機械と共存することにより、生活に余裕が出来た。

掃除や洗濯、料理などの家事は機械が全て賄ってくれるし、

面倒な手続きや申請なども簡単でスムーズなものとなった。


人は機械と融合することにより、不慮の事故や事件、天災に巻き込まれ犠牲となる可能性はほぼ0となった。

病気や怪我にもなりにくく、治りやすくなった。


人は機械に管理されるようになったのだ。



そして、やっと過去30年以内の人間にもその適応が承認された。

まだ試験段階だが、罪のない人や死ぬべきではない人、才能溢れる人、慈悲深い人、人の為に生きる人、惜しまれる人が無駄に死んでしまうことのないよう、あらかじめ保護することが可能となった。



「只今2018年より戻りました。

被験者2名への505931【セキュリティアプリ(安心安全機能:危険察知能力、危険回避能力、危険対応能力)・ヘルスケアアプリ(健康長寿機能:免疫、血糖値、筋力、心臓、脳などの機能正常維持装置)搭載マイクロチップ】

埋め込み完了です。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る