第34話◆リューシュン

なんで。




父は生きていた。



事故や事件の日にちが変わることはあっても、自殺の日は変わらないはずだった。



「だから言ったでしょ。大丈夫だって。」



訳がわからなかった。


「僕はずっと幸せだったんだから。一応、ずっと気にはしてたよ?なんで自殺なんてするんだろう?って。

でも、あかりを育てながら確信した。死ぬとしたら、それはきっと不幸な事故なんだって。それなら、君の話によれば、理論的に考えて僕が行動を変えることで事故を防げるってね。

それを証明出来るまでは本当ヒヤヒヤしたけど、これでやっと君の任務にも貢献出来たかな?」



私の目からは涙が溢れた。

止まらなかった。


噂には聞いていたけど、なかなかのキザ具合だな。と笑いも込み上げていた。


泣きながら笑う私を、父は優しく抱き寄せた。

そして頭の上にポンと手を置いた後、私の耳たぶを触ってすぐに離した。



彼氏かよ。と心の中で笑った。


と同時に、なにかが弾けた。


私、この感覚知ってる。



それは、紛れもなく私の中で閉ざしていた感覚だった。



こんな私を育てる父は可哀想だ。

こんな私の面倒を見るなんて不幸だ。

私のせいで父も母も死んだんだ。



そう決めつけていたのは、私だった。



父はそんなこと微塵みじんも思っていなかったのに。


あんなにも愛情を注ぎ続けてくれていたのに。


あんなにも優しい眼差しで微笑んでくれていたのに。



私は目を逸らし続けていたんだ。



その大き過ぎる愛情を受け入れられないでいたんだ。



私は自分のことしか考えてなかった。



そのことに気付いた時、ようやく私の中で弾けたそれはスッとなくなった。


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