第33話◆あきら

やっぱり。



あの日から、ずっと疑問だったその件がようやく明らかになる。



僕はその日が来るのが楽しみだった。



僕が自殺なんてするはずがない。





あかりが生まれた。



僕とゆかりの子だ。



可愛くないはずがない。



小さくてあまり動いてはくれないが、口元はゆかりによく似ていた。

耳の窪みや形、耳たぶの分厚い感じもゆかり似だ。


自分に似ているところはよくわからないが、髪質は僕に似て直毛の猫っ毛だった。



その柔らかな髪を触っていると、とても幸せな気持ちになった。



耳たぶもすごく触りたかったが、それは本当にたまににした。



見ているだけでも充分だった。




仕事から帰って、あかりを抱っこする。

目を瞑っている時は眠っていると思い、そっと抱き上げた。

泣かないのをいいことに私は理性を抑えられなかった。

そう。世の父親は仕事から帰った時子どもが寝ていると「やっと寝たから起こさないで」と触らせてはもらえないらしい。

娘への罪悪感と共に世の父親への優越感に浸っていた。


起きているときは手足をマッサージしたり身体の向きを変えたりした。


構いたくて仕方がないのだ。



でも、そんな自分を変態チックに感じて少し戸惑ったりもした。




子ども用の歌も踊りも覚えた。


元々出無精ではなかったが、ゆかりといた時よりもあかりを連れて外へ出た。


ゆかりとももっといろんなところに出かければよかったと思いながら、写真も一緒に連れて行った。


なぜか3人でいるような、心安らぐ時間だった。



僕は幸せだった。


確かに大変なのかもしれない。


周りからもあわれんだ目で見られもした。




でもそんなの気にならないくらい、娘が愛おしいのだ。



ゆかりの残してくれた、宝物を大事にすることは当たり前のことだった。



それでも、身体がついてこないこともあった。



気持ちとは裏腹に、眠気やだるさは容赦なく襲ってきた。



あかりのオムツを替えずに寝てしまったり、マッサージの途中頭突きしてしまったこともある。


その度に、こんな父親でごめんと心の中で謝るしかなかった。



それでも、こんな父親でも、父親でいさせてくれてありがとう。

生まれてきてくれてありがとう。と思わざるを得なかった。


こんな不自由な状態でも生まれてこさせると決めたのは僕だから。


もしかしたら、あかりは辛いのかもしれない。



泣きも怒りもしないが、本当は辛くて苦しいのかもしれない。



そうだとしても、ごめん。

僕は君に生まれてきて欲しかったんだ。


僕の勝手な都合で、君はこの世に生まれてきたんだ。

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