第30話◆リューシュン
「本当に行くのか?」
上司の目には涙が溜まっていた。
私の覚悟は揺るがない。
「はい。父を助けたいんです。」
親が子を想う気持ち。
親にとって子は宝。
自分よりも大事な存在。
そうかもしれない。
でも、子どもだって親を想ってる。
自分を犠牲に、辛い思いはして欲しくないし。
自分を理由に、自由を奪われているなんて嫌だし。
自分のせいで、人生が壊れていくなんて耐えられない。
「父は本当に私のことを大切に想ってくれていました。
それは時に痛々しい程に。」
どうして、私の為にそこまでするの?
ママの為?ママと引き換えに私が生まれたから大事にしなくちゃいけないの?
自殺しちゃうくらい辛かったのに、どうして私にはそんな様子を見せてくれなかったの?
全然知らなかった。
パパがそこまで追い詰められていたなんて。
そんなことを考えて何度泣いたかわからない。
私が生まれたせいで。
何度自分を追い詰めたかわからない。
そんなこと思う必要ないと母は私を慰めた。
そんな母を心配させまいと、私はいつからかそんな話はしなくなった。
それでもその想いが消えることはなかった。
私は、今人を救うことの出来る機関に携わっている。
過去を変えることが許されているのだ。
それが今より多くの人を救うことが出来る、そう承認されれば可能なのだ。
なのに、上司が首を縦に振らない。
国からは許可が下りているにも関わらず、私を可愛がってくれていたその人は唇を固く閉ざしていた。
「私には、止められないんだね。」
何度この話をしただろうか。
それ以外の方法を山程提案してくれた。
それでも私の選択肢はひとつしかなかった。
「大変お世話になりました。
このご恩は、決して無駄にはいたしません。」
私は父に会いに行った。
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