第20話

旦那の育児休暇が終わる前に、引っ越しをしました。

要介護の子を持つ片親に向けた施設が出来たのです。

旦那の仕事が始まったら、この子の面倒は誰が看るのだろうとヤキモキしていた私は、この施設の存在を知った時心からホッとしたのを覚えています。


旦那には頼れる人が居ないのです。

両親は亡くなりましたし、弟さんはとある宗教にはまってしまい会うことはなくなっていました。私の母は認知症になりとても孫の面倒を看ることなどできません。父は横領の罪を着せられ、あかりが生まれてからすぐ失踪しました。


更には、ただでさえ少子高齢化は進み介護人口も増えているので、入院は愚か、訪問医療も介護施設も手一杯ですし、保育園では健康な子しか預かってはもらえません。

そんな中、旦那が仕事の間でも常に看護師さんや介護士さんが目をかけてくれる環境にいられるようになったことにとても感謝しています。


どんなにつらくぞんざいな扱いをされようとも、生きていくための選択肢はひとつでした。


そんな時は、できるだけ娘を寝かせるようにしました。


この子は本当に泣かないのだろうか?とつねられたりもしました。


泣かないのをいいことに、寝返りや汗拭き、オムツを平気で放置する人もいました。



その度に、自分でやってあげられないことを強く悔やむことしか出来ませんでした。



ですが、旦那は毎日あかりのことを気遣っていました。汗疹あせもが出来ないようにベビーパウダーをまぶしたり、身体をマッサージしてくれたりもしました。

時には本格的に、ベビーマッサージのDVDを見ながら慣れない手つきでしたが。くすぐったかったりもしたけれど、そんな時娘はキャッキャと笑っていました。私も一緒に笑いました。


どこかに出かける時も、旦那はあかりに声をかけました。


目がしっかり見えるようになった頃、雪が降りました。

桜も見に連れてってくれました。


娘は内側の世界の中で、確実に成長していきました。


人見知りもすれば、イヤイヤ期も迎えました。


私は、自分が教えてあげられることはひとつ残らず教えてあげようと思いました。

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