第19話
(ほーら、よしよしよしよし
気持ち悪いね〜。もうすぐねキレイキレイしてあげますからね〜。待っててね〜。)
私の赤ちゃんが泣いている。
それに私は声をかけてあげることしかできない。
あーもー、どこ行っちゃったのよー。
1時間に1回はオムツ見てくれないとー。お尻だって痒くなっちゃうしー。
ドタカラン、ドタカラン、ドタカランカラン。
慌ただし階段をのぼってくる音と共に知っている音がした。
カランカラン
「あかりー。ママと一緒に用意したおもちゃだぞー。」
カランカラン
大きな手がマシュマロのお腹をポンポンした。
「あれ?
もしかして…うわ、くっせ!」
やっと気付いてくれた〜。
(良かったね〜。あかり〜。ふー気持ちいいねー。)
まだまだぎこちないながらも、旦那は一生懸命、心をこめて私たちのお世話をしてくれました。
そう。
娘の身体の中で、娘と私は生きていました。
身体は動かせない。
でも娘の身体の感覚は私にもあるのです。
とても不思議な感覚でした。
オムツが濡れれば気持ちが悪いし、背中が痒いのにどうすることもできないし、お風呂に入れてもらった時の心地いいのに顔にも声にも表せないのもどかしいし、予防注射は痛いのに涙も出せない。
外の世界は眩しかった。
そして時には薄暗く、真っ暗だった。
音は良く聞こえたし、匂いも感じるので、旦那が酒もタバコも辞めたのは割とすぐ気付きました。
そして、内側の世界には旦那は聞くことの出来ない泣き声が響いていた。
とはいえ、娘との魂が入れ替わるというのは聞いたことがあるけど
共存するなんてことがあるなんて…。
でもそのおかげで娘と四六時中過ごすことができたことにとても感謝しています。
ただ、やはりそのせいなのでしょうか。
娘の脳波をいくら調べても意味不明な波形しか出ませんし、時にはあり得ない二本の線が医者を更に困惑させたようです。
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