第15話
父は
いってきます。
ただいま。
おはよう。
おやすみ。
いただきます。
ごちそうさまでした。
父はいろんな話をしてくれた。
小さい頃は絵本だって読んでくれた。
私が10歳を過ぎた頃になると、仕事の
私が12歳の頃には、母との出会いについて話し出したりもした。
ベッドに横たわる私を椅子に座らせ、ずり落ちないように固定をして、映画を観せてくれたりもした。
音楽や落語も聴かせてくれた。
外にも連れて行ってくれた。
動物園に水族館。美術館や博物館にも行った。
乗り物には乗れないが、遊園地や公園、ディズニーランドもシーも行った。
季節毎のイベント、花見や花火。
海でイルカに触ったりもした。
勉強や雑学も教えてくれた。
食事も、食べられないけど
味わうことも教えてくれた。
舌に乗っけてから、すぐ取り出すのだけど。
たまに意地悪もされた。
もしかしたら、私がリアクションするのではないかと梅干やレモン。
キムチや納豆なども試された。
残念なことに、私がその時どんな気持ちだったかは伝わっていない。
なんの反応もない私に、一生懸命話しかけていた。
ただ横たわっているだけなのに、私は一丁前に風邪をひいたりする。
少しなら咳もする。
でも激しくなってくると自分ではどうしようもなくなる。
痰は絡むし、胃液も上がってくる。
そんな時は看護師さんがすぐ来てくれる。
要看護・介護者向けのシェアハウスに私たちは住んでいる。
在中の看護師さんやヘルパーさんは定期的に様子を見に来てくれたり、身体の向きを変えたりマッサージやストレッチ、体拭き、爪切りや、ヘアカットもしてくれる。
そのため、父は私のことを気にしすぎることなく働けたようだが、明らかに働きすぎだった。
にも関わらず、仕事から帰って来るやいなや手を洗い、必ず私の手や足のマッサージをしてくれた。
なにも感じていないように見える私に
父はいつだって普通に接するよう
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