第13話◆あかり

父は私が15歳の時に亡くなった。


快速で通過する電車の運転席の目の前に、何かに絶望するようにホームから倒れ込んだらしい。



母は私を身ごもったまま交通事故にあいそのまま亡くなった。


相手は即死。

保険にも入っておらず、無職な上に天涯孤独。

目撃者もいないため一銭のお金も要求できなかったし、

母の保険はがん告知後にやっと入ったものなので、たいした保険金にならなかった。



更に父は、私が2歳の時に痴漢の冤罪で捕まった。

無罪にはなったが会社はクビになったらしい。


そこそこいい会社に勤めていた。

にも関わらず、その後は東大の院を卒業したような人が働いているなんて誰も思いもしないような寂れた工場で働いていたようだ。


世間の目は冷たいのだとか。



なぜ私の父にばかり、不幸な出来事ばかり起こるのか。

不運なんてもんじゃない。

不幸なのだ。


その他にもいっぱいある。


母の母、私の祖母は認知症で長年施設にいて、最近ではとうとう母のことも祖父のこともわからないようだ。

父のことに至っては、認知症の初期段階から足繁あししげく顔を出しているにも関わらず毎度罵声ばせいを浴びせられ追い返されているらしい。


私の目線の先に、ウェディングドレス姿の母と思われる人とタキシード姿の若かりし頃の父が笑っている。


お腹が大きくなる前にと、妊娠が発覚してすぐに撮ったらしい。


しかし、結婚式は出来なかった。

父の両親が式に参列するために乗った飛行機が墜落したのだ。



父は本当に不幸だ。


私はこうしてただ横たわっていることしか出来ないのだから。

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