第12話

「あなたの恋人は、子宮ガンを患っています。

でも今子宮を取り除けば…助かるかもしれないんです。」


最後の切り札のように彼女は言った。


「あなたの恋人は、事故にはあいます。でも、妊娠を継続していた彼女は母体よりも子どもを優先して欲しいと願ったために亡くなったのです。

なので、もし妊娠をしていない状態であれば…助かるかもしれないんです。」



そうなると話は別だ。とは、ならなかった。



そうまでして彼女が願ったのならば、

尚更。かもしれない、に引きずられるわけにいかないのだ。



驚く程僕の意思はかたくなだった。

なぜここまで思っているのか、自分でもよくわからなかった。



「要は、僕が自殺しなければいいんでしょ?」


謎に満ち溢れた自信がそこにはあった。

とはいえ、自殺する人のほとんどは

自分が自殺することになるなんて思いもしないんだろうけど。



「私は、あなたの行動を変えることを促すことはできても、気持ちを変えることはできない。

だから、あなたが自殺してしまう程の辛い気持ちを変えることはできないの。

それはつまり…その…」


さえぎるように僕は、大丈夫と言った。



「なんでよ…。」



彼女はうなだれていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る