第11話

「あなたは何もわかってない。」


涙はあの一粒ずつしかこぼれなかった。


なんでわかってくれないの、という圧がキラリとした美しい目から怖い程に感じられた。



「無理もないですね。

急にこの先に起こる数々の不幸を聞かされて。そりゃあ混乱もしますよね。あなたが少しばかりヤケになるのもわかります。でも、成るように成れと思っているならそれは違う。

そんな生半可なまはんかな気持ちでできるようなことじゃないんです。

そんなこと言ってたって、疲れるに決まってるんです。辛いに決まってるんです。そんな状態で世話される人の身にもなってください。

やれないなら、後悔するなら、最初からやらない方がいいんです!」



彼女は、しまった。という顔をして、

つい感情的になって放った言葉が僕の心に火をともしてしまったのを悟った。



やらない後悔より、

やってから後悔する方がいい。


そんなありきたりな言葉が回転寿司の新幹線のようにシュッとあらわれた。



決まったレールの上に僕は乗ってしまっていると思い込んでいた。


先が見える人生なのだと。

結婚して子どもができて、家を買うなり車を買い替えるなどしながら、たまにゴルフや旅行をして、仕事を定年まで続けて、老後はそば打ち道具を集めてはみるが1日と持たず、後はなんとなく盆栽でもいじって、たまに来る孫と崩し将棋をする。



そんなわかりきった人生なのかと、うんざりしていた自分を羨やましく、そして恨めしくも思った。



まさか、自分にこんなにも波瀾万丈な人生が巻き起ころうとしているなんて。

ジェットコースターの序盤に登っていく感覚、カチカチとなる音を真っ暗闇で聞いているような気持ちだった。


僕は高所恐怖症な上に絶叫系の乗り物は大の苦手としていた。

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