第9話
リューシュンは僕の表情を察したらしい。
「まず、前提として他人の行動は操れないんです。
自分の未来を知った人間、つまりあなたのことです。その人の行動などが変わることはいいんです。
しかし、あなたが例え出掛けるななどと言ったところであなたの奥様は車の事故にあうし、あなたのご両親が乗った飛行機が墜落することは変えられないのです。」
大切な人の死を知ってタイムリープを繰り返すが、全く助けることができず事態が悪化するばかり…という物語は
小説やドラマの話だからではなかった。
「更に、もし私があなたの恋人の元に現れて事故を防ぐことができたとしても、それは子どもが健康に育つ。あなたが自殺をしない。あなたの不幸や苦難を軽減できる、ということには直結しないんです。
かもしれない論でしかなくなってしまうので、国からの承認がおりないのです。すみません。」
リューシュンは、そのかもしれない論に私もかけてみたかった。とでもいうような顔をして、唇の内側を強く結んだ。
「僕の死因はなんですか?」
「あなたは10年以上もの間、まるで生きた人形のようなお子さんのお世話を毎日行い、治療費もばかになりませんから昼夜問わず働きづめで、肉体的にも精神的にも疲れ果てていました。
亡くなる直前会社で同僚に、もう疲れたよ。と言い残して帰宅途中線路に飛び込んで亡くなりました。
遺書はありませんでしたが、あなたの自殺の根源は、残念ながら、介護が必要なお子さんだと承認されたのです。」
まさか電車に
日々心も身体も詰め放題のゆで卵のように押し潰される中で、
他人を巻き込んで死ぬのだけはやめてくれ。と何度叫んだことか知れない。
にも関わらず…。そんなことを考えていられない程に彼等は辛かったのだと始めて考えることができた。
「あの、我が子は障害児…ということなのでしょうか。」
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