第8話

全くその通りだと僕は恥ずかしく思った。


誰しもがいつどんなことが起きるかなんてわからない。


都市直下型地震が起きるかもしれないから、東京に行くのはやめよう。

ぶつかってくるかもしれないから、車の側は通らないでおこう。

市販品は身体に悪いから、自給自足で生活しよう。


そんな極論きょくろん、なかなか実行する人はいない。

いや、する必要なんてないのだ。

そんなことを気にしていたらキリがない。


それに、起きてしまえば意外と乗り越えられるものだ。

結婚する前に相手が不治の病だと知らされたら、少なからず誰しもがたじろぐだろう。

中には感動的な話もあるだろうが、大抵はそんな美談にはならないだろう。


だが、結婚してから発覚した場合どうだろう。

キリスト教式の結婚式では、病めるときも健やかなるときも愛し抜くと誓わされる。

もちろんその時は、病めるときが訪れることなんて微塵みじんも考えてはいない。

が、大抵は一緒にたたかわざるを得ないのではないだろうか。

それは情や周囲の目、見栄などもあるだろうが、ある程度の覚悟ができるような気がする。


話は戻るが、僕の場合は幸い

かもしれない論ではない。


確実に起こる不幸な未来を知ることが出来たのだ。



でも、正直なところ

僕の自殺や親族の不幸はかもしれない論でしかない。


ん?ちょっと待てよ。

危ない危ない。


「妻の交通事故を防ぐことはできないのですか?」


我ながらいい考えだと思った。

そうだ。事故さえ起きなければ、僕の恋人は死なずに済むし子どもだって普通に生まれるかもしれない。


そこまで考えて、僕はハッとした。

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