第6話
「私は、あなたを救いに来ました。」
と、強い口調で放たれた言葉は
僕の頭の中をなんとなく通り過ぎた。
そして続きの言葉もそのまま、各駅停車の電車のようにゴトンゴトンとゆっくり、
たまに立ち止まりながら今度は僕の頭上をなんとなく通り過ぎた。
そのなんとなく通り過ぎたその話は、理解するのに少しばかり時間がかかったが要約するとこうだ。
なんと、この先私の身には次々と不幸な出来事が降りかかってくるらしい。
それも人並み外れた不幸具合だという。
人の一生で起こる不幸の相場は決まっているそうだ。
よく、良いことと悪いことは同じくらいだなんて聞くが
僕の場合、2弱:8強くらいの割合で
圧倒的に不幸が上回るらしい。
僕の今日までの人生で、そこまで不幸な出来事があったか?と聞かれたら
そうでもない、と答える気がする。
ごく普通の家庭で育ち、贅沢な暮らしではないものの、友人や彼女ともそれなりに楽しんできたのだ。
過去の僕がなけなしの2弱の幸福を味わっていたとすると、
未来の僕には8強の不幸が待っているということなのか。
不幸という言葉がゲシュタルト崩壊を始めた頃、
なにが幸せでなにが不幸か?
と開き直り始めたが、
そんなそもそも論はハエ叩きのようにぴしゃりとぺしゃんこになる程に通用しない、誰がどう見ても不幸なのだという。
誰がどう見ても不幸とは、一体どんなことか?
逆に幸福の象徴で考えるとわかりやすいだろう。
富、名声、名誉、健康、快楽、解放、安定、安心、友情、結婚、家庭、生などであろうか。
これら全てが崩壊していくのだという。
砂山のようにさらさらと崩れて壊されていくのだという。
「あなたは今の恋人と死に別れ、今彼女が身ごもっているその子は身体も動かせない、意思も表せない状態で生まれてきます。」
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