第4話

驚いた。

もちろん、妊娠についてではない。

さっきも言ったが、一応察さっしはついていたからだ。

中絶…。考えないではなかったが、それしか考えていなかったわけでもない。


彼女はまだ若い。

ついこの間艶あでやかな振袖姿の彼女と、小洒落こじゃれた店でシャンパンで乾杯したばかりだ。

こなれたフリがバレないかとヒヤヒヤしながら、我ながらキザな演出をしたものだ。

今になって思えば、着替えくらいさせてやれば良かった。

パーティドレスの方が食べやすいし、なによりあんなに目立たなかっただろう。

あれじゃあ、新成人を連れ回しているのがバレバレだった。

ああ、あれから3ヶ月以上も経っているから〝ついこの間〟というと年寄り臭くなるかな。なんて思っている僕はというと2年浪人した後、やっとのおもいで東大に入り

院を出てから、働き始めてまだ2年。

年の割に社会人としてはまだペーペーぺーである。

が、今後の収入や生活に不安はなかった。

周りもぼちぼち家庭を持ち始めてはいた。

まだ早い気がしないではないが、父親になるのも悪くはないのかな…なんて思ったりしていたからだ。


それなのに、なぜ中絶を進められているのだろうか。

障害児だから、とでも言い出すのだろうか。

それか、その子が生まれると困る誰かがいる。

考えても考えても拉致があかない。


「そうすると、つまり、あなたは私の孫…とかではないということですか?」

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