第3話

「さっすがですね!!

そんなところに気付く人なかなかいませんよ〜」


その女は、またしても笑いを堪えたやけにニヤニヤした表情をしていた。



平然をよそおい、物分かりのいい男を演じてはみたが

なんとなく見透かされたような気がして、ふと目を逸らしたつもりが窓の外に視線は落ちていた。

しまった、と思ったが時既に遅し。


未だにベビーカーの女性は動かないままだし、自由に空を飛ぶ鳥や風にそよいでいるはずの木々たちすらも止まったままなのだから。

この信じられない状況が現実だと受け入れられなくて暴れ回る僕の脳みそに、観念しろと言わんばかりに突きつけられる光景がそこにはあった。



「未来から過去に来る時、微妙な歪みが生じて

こっちの世界が5分くらい戻っちゃうんですよね。

でも間に合って本当に良かったです。」



そうゆうものなのか。

やけにすんなり受け入れていた。

それよりも、なにに間に合ったと言うのか。

僕は14:00に彼女と待ち合わせをしている。

話があると言われているので、そのことだろう。

なにかを伝えに来た未来の娘、いや科学的に考えて早すぎる。

あのアニメだと孫の孫だから、最短でも孫…くらいか。


目の前の女性はスッという音をさせてから、こう言った。



「14:00を少し過ぎたころ、あなたの彼女が現れます。

大事な話があると言われてますよね。

…今あなたの恋人は妊娠しています。でも今ならまだ間に合うの。何が言いたいかわかる?」



大事な話、と言われていただろうか。

僕は話がある、と言われただけだと思っていた。

だから僕の中では、別れ話が有力視されていた。

大事な話と言われていれば、妊娠についてだと予想出来ていたはずなのに。

と自分の予想が外れたことへの、誰に向けてかさっぱりわからないしょうもない言い訳を考えているうちに、肝心の質問について

ただ黙っている、全く予想が付かないよといった男にしか見えなかったようだ。


彼女は、眉を少し寄せてから続けて言った。



「そしてあなたの恋人は、自ら妊娠していると告げますが、あなたは中絶を前提として話を進めてください。」

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