第2話

(この人は何を言っているのだろうか)


目の前の女性があまりにも普通に、そしてぐ僕を見つめている。

なにか緊張しているようにも、思い詰めているようにみえたその顔は、なにかを覚悟したような瞬間の後

にっこりと笑った。


「私、未来から来たんですよ。

驚かないんですか?」


驚くもなにも、変な女が現れたとしか表現が出来ない。とは言えない。


「これって、あのテレビの企画ですか?

信じる?信じない?みたいな。

本当に申し訳ないんですけど、僕そうゆうの引っかからないんで…。

他の人でやっていただいた方がいいかと。」


自分でもなんて夢のない、そして冷めた言い方なんだ。と思った。

いや、言い方というより、僕はそうゆう奴なんだ。

もっと感動や喜びを表に出せたらと感じることが、何度あったか数え切れない。



しかし、その女はニヤニヤしながら

そう、笑いを堪えるように僕のクソみたいな言葉聞いた後

ふっ、と笑ってこう言った。


「そう言われると思ってました。

信じられないのはよくわかります。

でもほら、今この瞬間私とあなたの時間しか動いていないんです。

わかりますか?」


確かに、店の時計もスマホも止まったまま。

この2階席は僕の意図いとはないが貸切になっていたため客はいない。しかしアイスコーヒーが乗っていたトレーを脇に抱える店員が、僕に背を向けて今にも歩き出しそうにしている。

さて、このマネキンのように硬直した店員は芝居をしていると思うことにする。

頭を必死に回転させて。いや、全く上手くまわらないが

ありとあらゆる脳内の引き出しを引っ掻き回した。

この異様な雰囲気を感じていないフリをするのに精一杯だった。

僕が窓の外に目をやるのには、時間が必要だった。

そう。怖かったのだ。

もし、そう、もし。

外にいる人たちが、車が止まって見えたりしたら…


いや、それくらいならこの店員のようにエキストラやらなんやらで誤魔化ごまかしも効くか。

もし…もしもそんなことが起きていたら、こんなリアクションしか出来ない僕の為に手の込んだ演出をしてくれたものだと感謝の気持ちを伝えつつ、もう一度謝ろう。


そんなどうしようもないことを決意してから、ようやく窓の外に目を向けた。



「ああ、凄いな。」


思わず口に出していた。

まさか、と思った。

そんなにお金かけてまで…

この企画の予算はどれくらいなのか、聞いたら教えてくれるかな?

なんて考えていたら、あることに気が付いた。


「これは僕としては過去に戻ってる、ってことになるんですよね?」

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