「私、未来から来ました」って人が目の前に現れたけどテレビの企画じゃないらしい。

三倉えりか

第1話◆あきら

-今、信じられない出来事が目の前で起きた。


この喫茶店にはよく来ている。

窓際の席でなんとなくボーっとしたり、小説を読んだり、資格取得の勉強をしたりと、なにかとここには足を運んでしまう。

窓の外を見下ろすと、せわしなく車は行き交い

歩道には、桜もすっかり散ってしまいいつの間にと言いたくなる程鮮やかな緑がよく茂った木々が行儀良く並んでいる。

ベビーカーを押す若い女性は通り過ぎ、向かいからはスーツ姿の男性、その他にも途切れることなく様々な人が行き交う姿をなんとなく眺めていた。


そろそろ彼女も来る頃かな?とアイスコーヒーの二口目を飲んでから、店の時計に目をやると14:00の5分前を指していた。


(あれ?さっきも13:55じゃなかったっけ)


そう、アイスコーヒーが届いた時にすぐ一口飲んで僕は窓の外をぼんやり眺めていた。

そして汗をかいたグラスで現に僕の手が濡れているのだから5分くらいは経っているはずだった。

が、開いた手の平にもグラスにも水滴ひとつ付いていなかった。


ドタドタ!!!!!



「はあ!間に合った!!!」


音に驚き店の階段に目をやると、ドタドタと上って来たその人は、なんの躊躇ためらいもなく、しかし息を切らせながら僕の目の前に座った。



「あの、」

声をかけようとしたその時

目の前の女性は言った。


「私、未来から来ました」

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