第27話「九番テーブルにご指命入りました?」
第二十七話「九番テーブルにご指命入りました?」
ーー聖剣の話をしよう
”聖剣”とは読んで字の如し、名は
あえて一言二言で表現するなら……
英雄が携えし神話の剣!
比類無き威力の宝剣!
他に類を見ない超弩級の兵器!
いやどれもピンとこない?
そうだな……
”世界のあらゆる存在を無意味なものにする
うん、やっぱりコレが一番シックリくる。
ーー俺、
いや、
と思うかも知れないが、俺だけじゃ無い、世界中の殆どの人間がお目に掛かったことはないだろう。
なぜなら”聖剣”は、最高の
現在、
つまり、この世に存在する聖剣は”八振り”しか存在しないと言うこと。
しかし、
”聖剣の召喚”とも呼ばれるらしいが……
俺はその”聖剣”なる不遜な存在に一家言がある。
見たことも無い存在に何故?
俺の言い様はまるで聖剣の存在を疎ましく思っているようだ?
……それは、そうだろうな……
ーー俺、
そう、つい、この間までは……
ーーガチャリ!
立て付けの悪い古い木製のドアを開ける。
「…………」
「今日は妹の方じゃないのか?」
入るなりの俺の言葉に、ヤツは頭巾から露出した目を細める。
「毎度どうも、
俺の質問には答えるつもりは毛頭ないようだ。
「……
俺は単刀直入に尋ねることにした。
「
「いや……そういう伝承的なものではなくて、実際にはそう名乗っている人物……」
「人物?」
「いや、それもちょっと違うな……」
俺はどう説明したものかと少し悩んだが、やはりここは原点回帰だろう。
つまり、
「古の大妖、
「…………」
その瞬間、
この男が本当の意味で驚くのは珍しい……いや、俺は見たことが無かったかも知れない。
「これは……また……突拍子の無いことを……」
俺にはある仮説があり、それを裏付ける……いや、これは今はいい……
「…………」
「…………」
「ふぅ……なるほど、
この男は色々と悪趣味な冗談を口にしてはさも有りがちに喜怒哀楽を演じてみせるが、本当のところ、まともな感情など無いのでは無いか?と思わせるほどに人間離れしている。
それは俺個人の感想ではあるが、多分事実だろう。
「それで?なぜそれをこの僕に?」
「……」
俺は答えずに、黒頭巾を見つめている。
意味なんて無い、なんだか、こいつなら何か知ってそうな気がした。
つまり、身も蓋もなく言ってしまえば”勘”なのだから。
「わかったよ、
ーーやはりか……やはり
俺はそのまま若干緊張気味に続きを待った。
「だったら……そうだね……だったら、そう言うことは本人に聞くが良いだろう」
ーーは?
今なんて言った?本人?
「本人っておまえ何言って……」
「おーい、
っておい!
なにキャバクラの指名みたいに呼んでんの!?
…………いや、行ったこと無いけど……
ーーガタガタッ
店の奥の方からなにやら物音が聞こえ……
ーーまさか……いや、有り得んだろ!?そもそもそれが出来りゃ世話が無い……
シャララーーーン
「……………………ま……まぢでっ!?」
澄んだ鈴の音のような、軽やかな音を響かせて……
「まったく、今日は同伴客で疲れておるのに、場内指名まで入れるとは……
「
「…………」
「…………」
世の理不尽に、思わず叫んだ俺を不思議な顔で眺める二人の…………人外共。
「きゃばくら?」
あそこまでノっておいて、純真な瞳を向ける基本純和風美女……
「う……うう……」
ーーってか俺は本当に行ったことないですよ……これほんと
店の奥から現れたのは、平安貴族のような艶やかな着物を身に纏った若い女。
たっぷりとした長い黒髪と、同色の切れ長の細い瞳。
艶のある和装美女は、どうやら九本ある黄金の尻尾は本日は収納しているようだ。
「……」
つい条件反射でつっこみを入れた俺だが、やはり信じがたい光景だ……
ほんと、
「なんじゃ?
いや……だれもそんなの信じてないって……ていうか、こんなキャラで良かったっけ?
「うむ、話は
くっ、完全にペースを乱された……コレでは駄目だ!
もっと、もっと核心を突かなければっ!
「あの……
ちっがぁぁーーうっ!!
なに聞いてんだ?俺?……それ気になることか?女の子の源氏名由来を会話の入り口にって……ほんとにキャバクラに来た
自身に激しく突っ込みながらも俺はそこから次の言葉が出ない。
「
「…………」
ーーそう……きたか……
「
相手がそこにこだわってくれたおかげか、俺は若干ペースを取り戻していた。
言わずもがな、
「言い張るも何も、後人たちがそう呼称したのであって、
「!」
ーー思いのほか口が滑らかだ……つまり……隠す気は無い?
「…………教えてくれるのか?」
そして、俺はやっと核心に迫る。
俺の問いかけに、平安時代の麗人は細い瞳をさらに細め、妖艶な口元に少し角度をつけて優美な所作で頷いた。
「…………」
「うむ……そうじゃな……そもそも
第二十七話「九番テーブルにご指命入りました?」END
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