第2話「気になるものは仕方ないだろ?」
第二話「気になるものは仕方ないだろ?」
昼間、
そもそも、仕事関係の要件で奴に呼び出され、そこで偶然彼女と会って、半ば無理矢理に厄介ごとを引き受けさせられたのだから、質問をぶつける相手としてはこれ以上適任はないだろう。
ーーで
結果から言うと、俺は大いに衝撃を受けたのだが、その話の内容の整理はまた後日だ。
なんせ俺は忙しい……今日は色々とやることがあるのだ。
俺のやること?それはシンプルに、貧乏故に商売を休むわけにはいかないってことだ。
俺は一つ目の用件を済ませた後、
対
普段から俺は、
といっても、俺は本来の
”
そして当然、俺は
つまり政府には認められていないため、いわゆるライセンスってものが無いから、こういう怪しげな店を利用するしかない。
人類の物理兵器を凌駕する
それ故に各
まぁ、俺の場合、能力値の不足どころか、
因みに
ーー
ー
まぁ、そんなこんなで、帰宅した俺は、購入した素材を前に、自宅の専用部屋でそれと睨めっこしていた。
専用室と言っても平均的なマンションの一室、物置に使っていた空き部屋に、武器制作用の専用工具と中古のパソコン、簡易的なトレーニング機器が数点あるだけの普通の部屋だ。
ーー!!
「むむ……」
目の前の”
「…………」
断っておくが、別に俺は友達が居ないからと、
毎日行っている日課、能力向上のための錬磨。
集中力をギリギリまで高めて石に注入し、その存在の有り様を具現化する。
なんだか小難しい話のようだが、簡単に言ってしまえば、自分以外の存在に干渉するだけの意思力で、それの未来を変革させる。
つまりその物質が持っていた別の可能性を見いだして俺の望む力を宿した原石に生まれ変わらせるのだ。
要は多様な可能性を秘めた神秘の鉱石で、素材の要として
ここの工程は刀剣を作成するに辺り、一番、肝の部分でもある。
後の加工や仕上げは技術的要因が大きいが、この部分は才能とそれを限界まで引き出せる日々の努力と言ったところか。
俺は独学ではあるが、世間一般で言うところの
ーーシュォォォォーー
暫くして、石は蒸気に酷似した煙を若干発生させ、赤銅色に輝きだした。
「ふぅ……」
俺は一応イメージ通りの原石が作成できたことに満足し、その後、それを置いたまま、ゆっくりと伸びをしながら立ち上がった。
「前のは結構自信作だったんだけどな……」
俺は過日、満月の夜の出来事を思い出していた。
月光の下、狼の
……そして、彼女が左手に握った、無惨にも刃こぼれした銀色の片手剣。
アレは俺の製造した剣だ……
……こんどこそは、もっと洗練された
俺は決意を新たにする!
「……まあ、それはそれとして、実際の製造は明日以降だな……」
力の抜けた表情に戻った後、すぐ傍のデスク上にあるコーヒーカップを手に取る俺。
基本俺は必要以上に無理をしない性格なのだった。
まあ、実際俺はそれなりに忙しい。
学業の予習や復習はしないし、塾などにも行っていない、クラブ活動も入っていないし……友達も無い。
そんな俺が忙しい訳が無い?
ほっといてくれ!
なにかと自分に自信の無い人間は、自己研磨に忙しいのだ。
「…………」
そ、そのままだと不安でいてもたってもいられなくなるんだよーー
……ゴホン、えっと、何の話しだったっけか?
あ、そうそう、実際、俺は、今からだって次の予定がしっかりとある。
俺の次の予定は、もう一つの能力?、多分能力であろう、”
とは言っても、イレギュラーな
何しろ、恐らく誰もが聞いたことが無い
とはいえ、俺は数年前から何とか自分なりにそれをこなしていた。
やることといえば、イメージと肉体的なトレーニング……それと実践。
ーー本当に役立っているのか……怪しいけどな
俺は軽く頭を振ると余計な思考を追い出して、既に冷めたコーヒーを一気にあおった。
「よし!」
頬を両手でパンパンと叩いて今日も日課に挑む。
「…………」
人生色々、人間、まあ様々な人種がいるもんだ。
俺みたいな平均以下の人間でも、かつては一人前に夢を見たことがある。
ーー英雄になって世界を救い、見目麗しい
なんてな……男の子らしい夢も見たもんだ。
だいたい
まぁ、現実は能力者の適正があるのはごく一部の人間だし、俺が得た?能力はどうやら
謎の能力と言えば、なんだか主人公ぽくってカッコイイが、実際は戦えない、
ーー半端極まりない立ち位置だ。
それでも俺は日々コツコツとこうやって自身の能力の研磨を繰り返している。
最近思うのは、意外と俺は腐らない性格なのかもしれない。
……いや、ちがうな、なんていうか、俺はただの貧乏性なのだ。
自分に自信が無い、だから、認めたくない反発したい現実でも、それさえも、少しでも磨こうとする。
同様に
……俺しかいないこの
ーーおっ、なんだか気分がいいな。
俺の俺による俺のための
ゴホン、で、俺が考えた階級がこれだ。
皮の盾級、青銅の盾級、鋼の盾級、
「…………」
……皆まで言うな!
俺にネーミングセンスを求められても困る!
あと、勉強とか、スポーツとか、容姿とか、金……とか……
「…………」
いや、だから悲しくなんかないぞ!……涙はちょびっとだけ出てるけど……悲しくなんか……
くそ、そんなこんなで、実際この鍛錬は、やる気を持続するのは大変だ!
俺自身が戦える訳ではない、防御のみ……どこで役に立つのか不明な能力だからだ。
ーー
俺の脳裏に、またもや
あの夜から何度もそれは経験したことだ。
「……やるだけ……やっとくか……」
やる気なく呟いたわりには、いつも通りイメージトレーニングから始めたその日の”それ”は、深夜まで続くのだった。
第二話「気になるものは仕方ないだろ?」END
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