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「自分でもおかしい奴だなぁとは思うんだよ。ころころファッションの方向性変えるし、選ぶ性別も違ったりするし」
三層に重なったプースカフェスタイルのユニオン・ジャックをストローで吸うと、ため息混じりでヤザキさんが言った。
「でも仕方ないじゃん、好きって思った好きなんだもん。メンズとかレディースとかそんなの関係なくて、たまたま好きになったのがそれだったってだけ。男でもスカート穿いていいじゃん」
確かに。スカートが女性だけのものである、なんて考えはもう古いのかもしれない。ファッションや思考はオリジナリティが溢れていて当然なのだろうし。
「俺だって好きな恰好するためにそれなりに努力はするわけじゃん。女の子の恰好するのに男っぽかったらアンバランスだし、化粧だって勉強したし。まぁそれも楽しいからいいんだけどさ」
ヤザキさんがどんなファッションをしていても似合うのは、そういう努力の賜物なんだろう。初めてこの店に来た時はゴスロリファッションだったから、てっきり女性だと思ったくらいだし。その後男の子だって分かって驚いたから。
「好きなものややりたいことはころころ変わるけど、好きな物ややりたいことを全力でしていくって気持ちはずっと変わらないから。これまでもこれからも。だから今度また違うファッションに心移りしても、それを全力でやりたい。好きな事をするためにする努力は楽しいものだから」
「素敵ですね」
だからこそ、ヤザキさんは輝いて見えるのかもしれない。
「時間は有限だからね。この時間を目いっぱい楽しむよ」
「はい、そうですね」
若いこの時は今しかない、ヤザキさんはそう言っているようにも聞こえた。それを分かっているからこそ、今を駆け抜けているのかもしれないな、なんて。
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