砂時計の砂が落ちる前に

カゲトモ

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「あれ、香水変えました?」

「えっ気づいたの? マスター凄い、さすがだね! こりゃモテますなー!」

 この間はもっと爽やかな香りだったのに、今日はとても甘い香りがしたから。フローラルって言うより軽くバニラの香りがする。

「だってヤザキさん、来て下さる度にアップデートされてくるから」

「ふふ、最先端だって言ってよ」

 最先端かどうかはとりあえず置いておいて、今回は何だ? 凄く、その、海外の女の子みたいな感じがする。金髪にカラコンが緑がかったグレーだからか? あ、そばかすも描いている?

「今はね、スポーティな女の子のファッションにはまっていて」

「なるほど、良く似合っていますね」

「んふ、ありがと。俺、何でも似合うタイプだからさ」

「さすがです」

「へへー」

 明るいブロンドは緩くパーマがかかってあって後ろで一つに結ばれている。有名スポーツメーカーのキャップと揃いのジャージなのに、こんなにもスポーティでおしゃれに見えるのはどうしてなんだろう。俺が同じように着たら絶対に“ただのジムに向かう人”になると思う。なんであんなに自然に恰好良くジャージとか着られるんだろう。誰か教えて。

「この間までは韓国の男性風、でしたよね?」

 つい二ヶ月くらい前は黒髪にシュッとしたスマートな恰好をしていた。普通に男の子の恰好だったし、色白なヤザキさんにピッタリだった。ミラー加工の丸い眼鏡も似合っていたし。

今は三本線の大きめなジャージにピッタリとしたパンツ。シューズは明るい蛍光オレンジのラインが入っていた。絶対俺が買わないラインナップ。さすがおしゃれ上級者は違う。

「韓国ファッションも楽しかったんだけどね。やっぱりアジア圏だからかな、どの服を着ても日本人にもぴったりはまるって感じで。おしゃれだし、色使いとも好きだったんだけどなー」

「今回はどうやってはまったんです?」

 確か韓国ファッションの時は偶然テレビで見た韓流アーティストの影響だったはず。

「服を買いに行ったらさ、偶然隣の服屋の店員さんがこーいうファッションで。あぁ、着たいなって思ったから」

 偶然、ね。

「ビビッとキタっていうか普通に可愛いでしょ、これ」

 そう言ってニッと笑って見せる。普通に可愛いですとも。男の子なのに違和感の欠片もないくらいに。

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