第2章_女王_


 ワーダスと過ごしていた森から空間転移した双子が自分達の国”だった”場所へと訪れたが、アインスライト王国によって滅ぼされた国は、かつての面影はなく荒れ果てた荒野へと姿を変えていた。

 唖然とその景色を眺めていた双子は、拳を強く握りしめた。

「あいつを絶対に、許さない。」

 ラインフォートは、そう言い唇を強くかみしめた。 ヘントロートも、それに応えるように頷いた。

 そして、改めて覚悟を固めた双子は、アインスライト王国へと歩き出した。

「ところで、どうやってあの国に潜入するの?」

ヘントロートの問いかけに

「ククク…そんなの魔法で……いけるか…?」

「いけるわけないでしょ…。」

そんな、兄の回答に溜息を吐きながら、こう言った。

「上からだよ。」

「上から?」

 そう言い、いきなり指笛を鳴らした。

ピー!!と甲高い音がその辺りへと響き渡り上を指さすヘントロートに、ラインフォートは、ヘントロートのあげた指を見上げるすると頭上に大きなドラゴンが飛んできていた。

すると、そのドラゴンが頭上から目の前へと降りてきた、大きな赤い翼に緑の大きな瞳それに、白く輝く牙の生えた口…とても立派なドラゴンだ。

「すげぇな…いつの間に…ドラゴンなんて…」

「育てた。ちなみに名前は、アヴァントヘイツだ。」

 どうやら、ラインフォートの知らない間にドラゴンを育てていたらしい。

「んで、こいつでどうやって行くんだ?」

「あぁ、アインスライト王国は、ドラゴンを大切にする伝統があるらしいから、ドラゴンと、ドラゴン使いにはあまり厳しい検査はしないらしい。」

「へ、へぇ…てかそれ何処の情報だよ…」

 そのラインフォート問いかけにヘントロートは、口の前に人差し指を添え

「ナイショ。」

ラインフォートは、納得していなかったようだが、ヘントロートに急かされ二人はドラゴン使いとして、アヴァントヘイツにまたがった。

 二人を乗せた、アヴァントヘイツは大きな翼をはためかせ空へと飛び立った。

 これから向かうは、アインスライト王国。この先に何が待ち受けているのだろうか。

 しばらく飛んでいると、ようやくアインスライト王国が見えてきた。

「ようやくついたか…。腰が痛い…。」

 ラインフォートは、腰をさすりながらそう言う。

「そうだね、ついたらとりあえず宿を探さないと。そろそろ降りようか。」

 ヘントロートがそう言うと徐々に降下していき下に誘導している人が見えてきた。

「こちらにお願いします!旅のお方ですか?」

「はい。」

 誘導してくれる人についてしばらく歩いていくと検問所が見えてきた。中に入ると、必要な書類を書くことと少しの質問だけだった。そして、国内へと通された。

「ホントに、なにもされなかったな…。いいのかこの王国…。」

 後ろを振り返りながら、ラインフォートが呟いた。

「まあ、いいんじゃない…?というかあんまりキョロキョロしないで…」

 王国の中心には、大きな赤い城があった。あそこに、女王のリジーワイス・レッドが居る。

 まず、あいつに復讐の前に、何とかして城に潜入しなければいけない。

 どうやらこの国では、2か月後に兵士の採用試験が行われるようだ。

「よし、これに参加しよう。」

「そうだね、これが一番早いかもね。」

 そうしてしばらく歩いて宿を探しながら、王国の中を探索する。すると、城がよく見える安い宿を見つけた。

「ここにしよう。」

 そうして、無事に宿をとり部屋から街の様子を眺めた。

この街自体には特に変わった様子はなくとても平和そうな街だった。

 そして、2か月の月日が過ぎ試験の日が来た。

 試験は魔法だけではなく座学や剣術もあり、試験は三日間を通して行われる。

試験1日目 座学試験後

「座学なんて簡単ですね。」

 そう言い、ヘントロートは余裕通過。

「危なかった…。」

 兄の、ラインフォートは、ぎりぎり通過。

2日目 剣術試験後

「これは余裕だな!!」

「ふぅ…。」

 これは、ラインフォートもヘントロートも余裕通過。

3日目 魔法試験

「魔法試験開始!!」

 最終試験の魔法試験の内容は、ペアを組んで、相手を”殺す”ことだった。

 ヘントロートの相手は、二十代半ば位の、男性だった。

「よろしくお願いします。」

 ヘントロートがそう言うと、男性は、こちらを見つめ、何かを呟いた。すると、ヘントロートの周りの、地面が急に盛り上がった。そして、その盛り上がった土の中から出てきたのは数十匹の蛇だった。

「そうか、彼は、蛇を使うのか、ならば…。」

 ヘントロートは、何か思い立ったのか、彼に向かって走り出し、牙を剥き出した蛇を、すれすれのところでかわし、彼の懐に飛び込んだ。それに驚いた彼は、咄嗟に後ろへとかわすが、すでに遅く、ヘントロートにより、召喚された毒の牙を持つ、オオトカゲに首を噛まれていた。

「爬虫類には爬虫類で返してあげますよ。」

 そして彼は、数秒悶えた後泡を吹きながら息を引き取った。その場にいた、蛇は魔法生物だったらしく、、審査員たちは、何か審議しているようだった。

 その同時刻、ラインフォートの試合が行われようとしていた。

 ラインフォートの相手は、猫…の姿をした人外だった。

「こりゃまたかわいい人間が相手なのかぁ、殺して差し上げるよ。人間…!」

「そりゃぁどうも。」

 そう言ったとき、すでに勝負は決まっていた。猫の彼が、動く隙も無くすでに、後ろを、とっていたのだから。始まって、数秒で、猫の彼の首が飛んだ。

「これだから、人間をなめた人外は弱いんだ。」

 そう言って試験会場を後にした。

 この日の結果は、明日、城の前に張り出されるそうだ。

翌日

 朝早くに宿を出て城の前へと行くと、一枚の紙が張り出されていた。そこには、合格した者の名前が書かれており、その中には、双子の名前もあった。つまりは合格したのだ。

「「やったな。」」

 そう言い、二人で手を打ち合わせた。

 今日から働くことになっているらしく城の中に入るように言われ、それに従う双子。そして、初めて女王の顔を見た。

 あれほどまでに、若い少女が、自分たちの国を滅ぼしたのかを疑うほどに、若かった。歳は、十代前半位だろうか…。双子とは年も変わらないほどだろうか…。

 だが、どんな理由があったとしても、他国を滅ぼし国民を殺したた罪は重い…この復讐は実行しなければいけない…。そのためには、もっと女王の近くへと行かなければ…____________________。


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