獲物はこちら、貫くのもまたこちら
手の甲に、針を刺す。
文字通り、貫く痛み。
そうだった、そう、痛みはこれだ。
強く駆血しているから、腕全体がしびれている。うまく動かせない。でも、それでいい。こちらは獲物。貫くのはこちら。
生ぬるい痛覚だけで痛みだなんて、私も馬鹿になったのかもしれない。
本物を忘れていた。
固定が甘いから、針先が進まない。
きっちりと狙いは明確に定めて、逃がさないようにしっかりと。
指先の感触で見極める。そう、そこに在る。
指の腹を使って、表面積を増やすの。
決して逃がさないように。
たった一回で、必ず貫く意思を持って、その一瞬を決意する。
それが無駄にならないように。自分を縛る。
準備を怠らないのは必至。
一つも間違わないように、気を付ける。
細心の注意を持っておくの。もしかしたら一番必要なもの。
妥協なんて許さない。私たちが握っているものは、そんなものではないでしょう。
甘えは、身を亡ぼす。
忘れないで、必ず覚えておいて。
逃げるなとは言わない。しかし向き合うのは必要。
後悔するのは、いつだって自分自身なんだから、律するのもまた自分しかいないのよ。
針先の感覚を覚えて、そのままほんの少しだけ進めて、赤が見えたら正しい。
繰り返して繰り返して繰り返して、そうやって覚えていく。
どういう痛みを、与えているのか、覚えておく。
それがきっと、必要なのよ。
本物を、覚えていく。温室にいたいならそこにいなさい。そこからこちらを見ていたらいい。本物は、あなたの手には残らないだろうけど。
残念だけれども、それがきっとあなたの結果になる。
私は、御免だわ。
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