問
例えばここが、深い海の底だったなら。
きっと太陽を望むことはなかった。
例えばここが、灼熱の地だったなら。
きっと、夏のきらめくしずくを素晴らしいとは思わなかった。
例えばここが、空中に浮かぶ箱の中だったなら。
きっと、二人掛けのソファの密度を愛おしいとは思わなかった。
例えばここが、暗い森の中だったなら。
きっと、きらめく緑を美しいとは思わなかった。
例えばここが、わたしの奥深くではなかったなら。
きっと、こんな言葉たちは浮かばなかった。
そっと目を閉じて、息をつく。
手のひらから力を抜いたら、ペンが床に落ちた。
小さな音を立てて、転がっていく。私の、唯一の武器。
そうきっと、私が輪郭を失って、人間を辞めることが出来る瞬間。
想像してごらん。
自分の輪郭がにじんでいく様を。きっと、浮かぶように泳ぐようにさまようことができるよ。
きっと、悪くはない。
触れた指先から、熱がこぼれて、床に池を作るんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます