鏡遊び



お前は誰だ。

お前は誰だ。


鏡の中に映る自分に問いかける、繰り返し繰り返し問いかける。

これを続けると、精神がおかしくなっちゃうんだって。

なるほど。僕が壊れているのはそういうことか。

あははははは。

平坦に笑ったところで、大笑いしているように、見えるだろう。

文章の素敵なところさ。

書かなければ、想像されることもない。

真っ暗な部屋で、液晶の明かりだけでPCに向かっていたとしても。

実際は「そう見せている自分」しか見えないんだから。

それしか、そこからは見えないだろう?

本当の「僕」なんて見えない。


実際に隣に立っていたって、本当の自分なんて見えやしない。

SNSを通してしまえば、もっと見えない。

だから言ったろ。そんな人間なんかじゃないって。


お前は誰だ。

お前は誰だ。


鏡がなくても、同じことだ。

一体どこに自分が立っているのか、もう僕にはわからない。

ヘッドフォンから流れる能天気なEDMも、へらへら笑って問題を誤魔化して最終的に泥を被りに行くだろう自分も、直接的に攻撃してくれたらどれだけ楽だろうと鼻で笑った自分も。

耳鳴りがうるさくてめそめそする自分も、実際は結構ダメージを受けているのになんてことない顔をしようとする自分も、ああだったらバイク乗っちゃうんだったバイクに乗っても問題は何一つ解決しないんだってわかっている利口な自分も。


お前は誰だ。

お前は誰だ。

誰だろうな。僕が一番知りたいよ。だいぶ前に鏡はぶち割った。ひび割れていくつもの破片に映る自分の顔に辟易していたんだったな。もう、使うこともない鏡なんだけど。


お前は誰だ。

僕は僕だ。

知らなかったのか。笑えてくるな。

じゃあ、そこに居るお前はいったい誰だ――?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る