窓の外で風が鳴っている
窓の外で風が鳴っている。
切り裂くような閃光のわずかのちに雷鳴が轟いた。
ヘッドフォン越しに聴こえる世界は、どこか別の世界の出来事のよう。
私はあふれ出した感情を、真っ白のページに叩き込んでいる。
もっと吹き荒れろ。もっとだ。もっと。
いっそ私も飲み込んでしまえ。ひとつ残らず。外面ばっかりが良いこんな道化も一緒に、飲み込んでしまってくれ。
ヘッドフォンから流れるのは、まぎれもない命の熱情。
刻むスネア、ハイハットが貫く。遊ぶようにためらいのないギター。どっしりとして支えてくれるベースは少し余裕。淡々と歌っているようなボーカルは、何一つ忘れていない。
命を確かに歌っている。命の底を知っているから、命を揺さぶって離さない。
窓の外で風が鳴っている。
先ほどよりはなお一層強くなった嵐は確かに吹き荒れている。
ヘッドフォンの中の音楽は、確かに私の脳から魂を揺さぶって縫い付けてくる。
私は尚も高ぶった感情を少しずつ汚れていくページに楔にして突き刺していく。
もっと突き刺され。もっともっとだ。痛いほどに、深く突き刺さっていけ。
いっそ巻き込んでしまえ。もっと深くまで、向かう先は奈落だろうか。
光の一筋さえ届かない深い深い夜の底に、私はまだ巣食っている。
忘れないで。此処に居る。
命を燃やしてここに居る。たくさん書こうが遺そうが、私の命はこれ一つ。
今までの時間は戻らない。これからの時間も伸びはしない。
それでも、忘れはしない。私のこの言葉に感化されてくれた人のことを。確かに届いていたことを私は忘れない。
だからどうか、こんな私を忘れないで。
そこからはきっと見えはしない。私の感情も表情も、熱情も見えないはずだ。これはまがい物なんだから、見えるはずがない。
だとしても、私は確かにここにいた。
窓の外で風が鳴っている。
ああ、だから寒いのだ。
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