しっぽ



頭の中に浮かんだ情景を、温度を、感情を、文字に起こすのだ。

タイピングしている一瞬の時間も惜しい。

思考している逡巡の隙間すらも惜しい。

今、この言葉たちを形にしてやらないと、永遠に海の中をさまよってしまう。

だからこの一瞬で、早く形にしなければ。

私の存在ごと、塵も残さず消えてしまう。


両の手に確かに在った言葉の重み。

砂のように指の隙間を流れ落ちていく。

頭の中にあった夢の欠片。

光の粒になって薄暗がりの中に馴染んでしまう。

追いかけて、手を伸ばしても届かない。


光の中に居るようで、目がくらんで何も見えない。

闇の中に居るようで、手を伸ばしても掴めない。

今形にしなければ、言葉のしっぽを追いかけて、

ほうき星を追いかけるように、今日も走るのだ。

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