深淵から


初めまして、さようなら。

あなたはとても素敵な人。

だからきっとそばに居てはいけないのね。


さようならと言うのは辛いけれど、息をし続けるのも疲れてしまったの。あなたにはきっとわからない。強く生きているあなたには、きっとわからない。

今が暗くて明かりも見えないの。

伸ばした先のつま先も見えないの。

また、目が悪くなったのかもしれない。

きっとそう、だってあなたの顔も見えないわ。


初めまして、さようなら。

あなたは私のすきなひと。

だからきっと幸せになってほしいのよ。


さようならを言うのはとても簡単なのだけど、あがき続けるのも疲れてしまったの。あなたにはきっとそうは見えないだろうけど。前を向いているあなたには、きっと見えない。

眩しくて何も見えないの。

明るい未来、幸せな明日も持ってないの。

また、会えなくなるのよ。

きっとそう、怖くて逃げだしたくなってしまうから。


あなたには触れられない。

傷をつけたくない。

縛り付けたくない。

私にはあなたと生きる価値がない。

私は私がかわいいだけ。

あなたに優しく触れる方法を知らないの。

あなたを守って匿う方法がわからないの。

あなたを縛り付けずに留めることはできない。


ねえ、あなたには幸せになってほしいの。世界で一番。私なんかよりも強く。誰よりも強く。

願っている。私のわがままだけど、どうかそのままでいて。

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