あの頃の私と生きにくいあなたのための言葉の森

おなか の あかい いと 。

あかい　あたたかい　みずのなか。

しんぞう　の　おと　が　する　。

ゆっくりと　ゆれる　ゆれる　ゆれる　。

ゆりかごの　なかで　ゆれる　ゆれる　ゆれる　。

水を伝って聴こえる

たくさんの音。

脈を伝って

オカアサンが

よくわかる。

私の　オカアサン。

私が選んだ。

このママがいい。

ゆりかごを揺らす。

ゆりかごを撫でる。

優しい、ママが好き。

ママが笑うとよくわかる。

悲しいと、よくわかる。

いらいらも

たのしいも

さみしいも

つかれたも

つらいのも

よくわかる。

ママとは赤い糸でつながっている

たくさんの　糸。

集まって　ねじれて　おなかにつながる。

あたたかくて、気持ちがいい。

ママの中。

ママ、どうしてそんなにかなしいの？

息ができない。

ママがかなしいと、わたしもかなしい。

ねえ、　ママ、　はやくあいにいかないと

ママに、　私の　ママに

だいじょうぶだよって、言わないと。

気持ちが良かったのに

狭くなる。

くるしい。

わたしも、くるしいよ、ママ。

パツん

水がはぜた。

せまいせまい

くるしい

からだ

が

いきが

くるしい

たすけて

まま

とても　まぶしい

とても　あかるい

とても　くるしい

ままはどこ

さむいよ

くるしいよ

はなれたくないよ

いやだよ

ままはどこ

ぼんやりしろい　あなたは　だあれ　？

やわらかくて　あたたかい

わたしに触れる手

なでる

やさしい手が、ママとおなじ。

こんなところにいたんだね

もう、いなくなっちゃ　だめでしょ。

わたしの　ママ

ママの　わたし

ママとの糸は　ちぎれてしまったけれど

ママがいるからだいじょうぶだね

わたしが　いるから　だいじょうぶだよ　ママ。

だから　泣かないで　ママ。