白衣の天使は、翼を白く塗る。


天使の翼が白いなんて、いったい誰が決めたんだろう。

こっちはいい迷惑だ。

白衣の天使なんて言い出したのは、いったいどこの誰だ。

本当に、いい迷惑だと思う。

奉仕の手を休めることはできない。

こちらの数は限られている。

対して、それを受け取る人間の数は、ほとんど一定だといってもいい。

奉仕の手が疲れて疲弊しても、誰も守ってはくれないのだけれど。


そう言いながらもやめないのは、自分の中に天使が根を張っているからだと思う。

私は一生、天使を辞めることはできないんだと思う。


傷ついた人がいたら気になって見に行ってしまうし、

調子が悪いと言われたら問診してしまう。

そういうところが、天使の根だと思う。


それを人は素質だと言うんだろうけど、

私は向いてなんかいないんだと思う。

天使には、向いていない。

それは初めにわかっていた。

それでも成ったのは

必要とされたかったから。

大事な人に、手を差し伸べたかったから。


大事な人に、少しでも楽になってほしい。

そう願ったから。

今でも天使を何とか続けることができている。

足元はおぼつかない。

それでも立とうと思うのは、大事な人たちがいるからです。


白衣の天使は、翼が白く見えるように白を塗る。

元の色なんて、覚えていない。

マスクで顔を隠して、自分のことは覆ったまんま

誰かのために手を差し出す。

それを毎日、繰り返している。


背中の白い翼は、天使の証。

胸を張って、歩くのよ。痛みも苦労も、見せないで。

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