傷跡

やわらかい、皮膚の下。

私の本当が隠れている。

きっとあなたにも同じものがある。

それを知ってはいるけれど、

私は知らない顔して

あなたの皮膚に触れるの。


あなたの心に触れるふりをして

私の傷にそっと触れるの。

いくつもいくつも、波打つ傷跡をなぞるの。

痛くもない傷跡を引っ掻いて、えぐって、押さえつけて、

そこに傷があったことを思い出すの。忘れないように。


あなたはきっと知らないでしょう。

私の傷がそこにあることなんて。

私が話さないと、あなたにはわからない。

だったらもう、知ろうとしないで

そのまま全部包み込んでしまって

なにもかもを覆い隠して。


やわらかい、暗がりの下。

あなたの本当が隠れている。

きっと私にも同じものがある。

それを知ってはいるけれど、

私は知らない顔して

あなたの背中に触れるの。


あなたの傷に触れるふりをして

私の傷にそっと触れるの。

いくつもいくつも、落ちた涙の跡をなぞるの。

いつまでも痛い傷跡を引っ掻いて、えぐって、押さえつけて、

傷が治ってしまわないように、深くするの。忘れないように。


あなたはきっと知らないでしょう。

あなたの傷がそこにあることなんて。

私が話さないと、あなたにはわからない。

だったらもう、忘れようとなんてしないで

そのまま全部包み込んでしまって

なにもかもを覆い隠してあげるから。


あなたをそのまま、好きになるから。

傷も癒さず私の前に来て。

いつでも手当をして、一緒にいてあげるから。

痛みは私がもらってあげるから。



握りしめた掌の、指を一本ずつひらいていって、

自分でも気づかないほど、自衛していたんでしょう。

こわばった首筋から背中は、明日になると痛んでくるよ。

だからはやくお風呂に行っておいで。

泣いた後はこすっちゃだめよ。暖かいタオルを押し当てて。


背中に耳を押し当ててみて。

私の背中に、

そうやって、


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