君と僕達の世界

池田蕉陽

第1話 こんにちは、新世界

真っ赤真っ赤真っ赤


まるで、血の噴水ね


自分の手首から多量に出血している光景を眺めていると、なんだか落ち着く。


もっと、もっと、もっと見たい。


さらに、右手で血に染まったカッターナイフで左手首傷口をえぐる。


たまらない、最高、安らぎ、いろんなものが満たされていく。


もうやばい、気持ちよすぎて死んじゃうかも

おかしくなっちゃう


いや、私はまだ死なない。あいつらを殺すまで。




チーンチーンチーンチーンチーン


踏切の音が聞こえてくる。

これが、地獄ゲームの合図。

1人の少女は走った。

電車のホームを羽ばたいた。

ちょうど電車が通る線路の真ん中に着地する。


ああ、やばいやばい聞こえてくる。

右耳から聞こえてくる電車の音

ガタンガタン

すぐそこまできてる。

ちょっと横を見てみようか。

好奇心と恐怖に襲われながら右を見る。

もうすぐそこまで、電車は来ていた。

もう2秒くらいで、内蔵ピースが散らばる。


リストカットは怖くないのにな。


少女は急いで反対側のホームを登った。

すぐ後ろに電車が走っているのが分かる。

ものすごい風がきて、もしカツラだったら吹っ飛んでいたなとか、訳の分からないことを考えた。


「はい、おめでとう」


女の声が聞こえてくる。

しゃがみこんだまま、顔を上げると制服を淫らに着こなした女が3人、醜悪な笑を浮かべている。

真ん中がリーダー格。


殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す


殺意しかない。それ以外なにもない。


しかし、殺せない。



なぜなら、私は約束したから。僕と。




ああ、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

なんだこれ死ぬほど痛い!


少年、いや少女、見た目は少女、中身は少年。


少年は左手首がひどく疼いていた。

厨二病ではない。本当に痛む。死ぬほど。てか、死んでもおかしくない。


また、あいつやりやがったな。


人を殺すなとは約束したけど、次はリストカットも禁止しないとな。僕が死んでしまう。


血が滲む包帯を見る度に鳥肌がたつ。


ああ、もうこんな時間か。学校へ行こう。女子高へ。




んったく、遅いな。

全然電車来ないな。延着か、運が悪い。


「あっ!ゴミじゃん!」


「おい、聞いてんの?」


「おいゴミ!こっち向けよ!」


「え?僕のこと?」


3人のjkがいた。

わを、その制服の着方セクシーだね。

こんな僕でも胸元に目が行ってしまうよ。

てか、ゴミって何ゴミって


「おめぇーだよ!てか僕ってキモ!何お前、てかなんで無視したわけ?ぶっ殺すぞ?」


「えーひどいなー、てかぶっ殺すぞって女の子がそんな言葉使っちゃダメだよ、モテないよ、僕はそれも一興とは思うけど、周りが...」


「うわっ」


少年は胸ぐらを掴まれた。僕が掴みたい。

ほかの2人は黙って見てるだけ。この子がリーダーってわけだ。なるほどね


「お前、まじで殺すぞ」


ガチトーンだ。本当に殺されるかも。それも面白い。

ついつい目が膨らむ胸元に。ああ、たちそう、いや、たつものもないな。


「まもなく、三番線に電車が到着致します。危険ですので...」


アナウンスが流れる。

やっと来たか。


「殺してもいいけど、その前に僕とエッチしてよ、そしたら殺されてもいいかな」


「は?」


jkが怒ってる。いや、困ってる?


あ、電車きたきた


少年が手を優しく振り払う。


「じゃあ、また学校でね」


ああ、楽しみだな、この体で初めての学校生活。


この体になって1週間、リストカットの痛みにはなんとか耐えた。


この体の主の少女はどうやらいじめを受けてるみたいだね。

全くめんどうだな、その代わり可愛い女の子いっぱい見れるな、初めてのこの体での学校。

前の体はニートのおっさん、その前の体は普通の男子中学生、その前は主婦、その前は...なんだっかな、忘れてしまった。


いったい自分がどこから産まれたのか、どこから始まったのかも分からない。


ま、いいや、とにかく女の子女の子、パラダイスが僕を待っているよ。



痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


あっ、別に病んでるわけじゃないよ、ほんとにそれくらい痛い。リストカットの方じゃない、顔。顔が痛い

殴られた。女に。しかも集団、集団リンチだ。

こんなの初めて、興奮。いや、しないしない、泣きそう、痛くて泣きそう。とにかくトイレに逃げこもったけど、これからどうしよう。

ん?誰かくる


バシャン


うわ、すごい雨だ。

こんな雨初めて。

ってなんでやねん。

トイレで雨降るわけないでしょ


「いっ!」


空のバケツが頭の上に落ちてきた。

バケツが地面に落ち、嫌な音が響く。

ついでに外から悪役の笑い声。


もう、なになになに。女子のいじめってこんな悪質なわけ?女子怖、やっぱ彼女いらないかも。セフレ、セフレで充分だね。


そろそろこの体も飽きてきたな、女子校いけると思ってここにいるわけだけど、やっぱ男じゃないとエッチできないからなぁ〜、うん、よし、変えよう。そして、帰ろう。



ただいま〜

って誰もいないのか。

そう言えばこの子のお母さんは仕事。

お父さんは女作って捨てたって言ってたっけな。

全く不幸だな、この家は。

同情してしまうよ。


あーいてて、まだ顔が痛む。どうしたもんやら。絆創膏でも貼るか?

やっぱめんどくさいな、寝よう寝よう。次起きた時はどんな体に行ってるんだろうな。

ワクワク

おやすみ〜





今日何日?


スマホには11月23日と書かれている。


あれ?おかしい、昨日21じゃなかったっけ?

てか、なんか顔痛いし、なにこれ。

あ、そうか、あの子が昨日生きたのか。私の代わりに。

あ、LINEいっぱいきてる。

うざいなー、あいつかな。

LINEを開く。

名前「死ね」、これは私が勝手に変えた名前。

あのいじめのリーダー格のこと。


99件もきてる、うっざ


「しね、ごみが、絶対に殺す」


これに似たような言葉が99以上も、はぁ、暇してるんだね、まったく、ん?てかなんでこんなに怒ってるの?まさか君の仕業?


必殺「会議モード」


「うん、多分僕」


「余計なことしないでよ!」


「ごめんよ」


「死ね死ね死ね、みんなこの世からいなくなれ」


「はははは、おもしろいね、てか本当は体移るはずだったんだけど、できなかった」


「君も殺す、絶対に」


「どうやって?」


「私が死んだら君も死ぬ」


「そうなの?やってみてよ」


「いいよ、試してあげる、どうせ生きててもいいことなんかないし」


「君可愛いね」


「は?なにいってんの、キモイんだけど」


「女の子にキモいと言われたの2回目」


「きもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもい」


「最後に君とエッチがしたい」


「まじできもい、しね」


「うん、だから殺すんでしょ?どうやって死ぬ気?」


「飛び降りる、このマンションの屋上から」


「上まで行くのめんどうだから、ベランダからでよくない?」


「確かに、たまにはいいこというね」


「まあね」


会議モード終了


ベランダに行く。

風が涼しい。

顔が痛い。


いろんな 建物が見える。

学校も見える。


あの世ってなにがあるのかな。

天国?地獄?

なんかの漫画であの世は無みたいなこと言ってたけど、どうなのかな?


まあ、死んでみれば分かるよね。

まって、最後に言わせて。


「お前ら全員死ね」


体が前のめりになり、下の光景が見えてくる。

言い忘れていたけど、ここは19階。上手く内蔵飛び散って死ねるよね。


足が上にきた。

ついに落ちる。

きゃぁぁぁぁぁぁ!!!なんてことはもちろん言わないよ。



うわぁぁ!すごい!気持ちいい!落ちるの気持ちいい!

だんだん下の人間が大きく見えてくる。

もうすぐ!もうすぐ地面に落ちる!!

ワクワク


神様、私はあなたを許しません。






ああ...腰が痛いな...だれか腰をマッサージしてくれんかのぉ...

婆さんや、婆さんはいないのか?

あ!しもうた!婆さんは5年前に死んでもうたんじゃ!

忘れてたわい!ガハハハハ!!

笑えんわい...


てか、ここはどこじゃ?


周辺を見渡す。

まるで、天国。

地面は薄ピンク色の雲みたいな。

ついでに、数メートル先に神殿らしきもの。


ここはもしや...ついにわしも死んだか!ガハハハハ!!

しもうた!枕の下にスケベな本隠しっぱなしじゃ!わしが40代の熟女好みということがバレてしまう!

孫に!孫にバレる!娘孫にじゃった!

ついでに娘にも笑われてしまうじょ!

じょってなんだ!じょって!


はぁ、疲れたわい、とにかくあそこの神殿行こうかの。


ん?今気づいたが、腰痛くないぞ?あれ?どうしてじゃ?

ふぁぁぁぁ!?なんじゃこれ!

わし、なんでセーラー服なんか着とるんじゃ!?わしそんな趣味...まぁ確かにあった時期もあった。

まさか、神様が最後にわしの懇願を...

とにかく神殿行こうかの。


着いた。

迫力すごいのぉ

中に入る。

異様な空気感。

まるで、孤独死しそうな空間。


誰もいないのぉ


中は空洞、明かりすらない、神様もいない。


なんじゃこれ


「あぁぁぁぁぁん!!遅刻遅刻〜!」


どこからともなく声が聞こえてくる。


なんじゃなんじゃ!


老人、いや、少女、いや、少女の姿をした老人が、聞こえてくる声を探そうと首を回す。


すると、老人の背中に衝撃が走る。誰かにぶつかられた。当たり屋でもあらわれたのか!?


老人が前にこける。


「ぐはっ」


痛みは感じない。

死んでいるから。


「あっ、ごめんなさい、大丈夫...ですか?」


「だれじゃ!」


老人が少し起き上がり、振り向いて正体を確認する。

なんてこった

この小娘ときたら、わしと同じセーラー服に、さらに食パンを咥えているではないか。

奇妙な小娘じゃ。


「ご、ごめんなさい!私ったらつい!曲がり角なのに確認もせずに走ったりして」


小娘は若干股を開いて尻餅をついている。

スカートの中からストロベリー発見。

うほっ


「許してやらんこともない(。 ・`ω・´) キラン☆」


「ありがとうございます!」


「ところでそのいちご...」


あれ?


小娘が消えた。


なんなのだいったい。


これは一体なんじゃ



あれから、5時間。


なにも起きない。


神殿の中をぐるぐる回ったり、神殿を出たり、散歩したりしたが、何も起きない。


暇すぎるのぉ


てか、さっきも思ったのじゃが、なんでわしはセーラー服を着ているのじゃ?しかも肌もツヤツヤ、オマケに髪も長い。前はツルピカだったのに。ついでに、左手首に包帯。血が滲んでいる様子はない。


まてよ、わしは女なのか?


そうか!女に転生したんじゃな!


そうかそうかって...なんでじゃ...


「やあ」


少女の声が聞こえる。


振り返る。そこには老人と同じ格好をした少女がいた。


「お主は?」


「あなたと同じだよ、僕もこの女の子、君もこの女の子」


「なにを言っているのじゃ?」


神殿の中、2人の少女が訳の分からない会話をしている。


「でも、この女の子は死んじゃったみたい」


「ほ、ほう...つまりどゆことじゃ?」


「簡単に言うと、その女の子は多重人格障害を持っている」


「ほ、ほお」


「僕達はその他の人格なんだよ」


「ほ、ほお」


「女の子は僕の人格とあなたの人格がある。そんな記憶ありますか?」


「すまないが、あんまりよくわからん」


「そうですか、あなたは記憶がないのですね。僕はありますが」


「ほ、ほお」


「これは、女の子の妄想であり死後の世界。どちらでもあるのです」


「ふーん」


「でも、その女の子がここにいないということは、まだここに来るべきではないということです」


「へぇ〜」


「今、彼女は生と死の狭間にいます。そのどちかを僕達が決めれます」


「そうなんじゃのぉ」


「どうしたいですか?」


「どっちでもよい」


「わかりました、なら僕達が死んで女の子を生き返らしせましょう」


「まじ?」


「はい、僕も正直まだ死ぬのは嫌なんですかけどね、エッチもしてない童貞だし」


「わしとヤる?」


「さてと、ではお別れです」


冗談の通じない奴じゃ


「なんか、ようわからん人生やったのぉ」


「僕もです」


目の前の少女が透けていく。わしも透けていく。


「では、またどこかで」


「うむ、どこがで」


その世界は消滅した。






んーーーーーー頭が痛い...

目を覚ますと真っ暗

覚ましたかどうかも分からない。


てか、なにこの感覚。


全身がなにかに押さえつけられているような感覚がする。

すごく重い。


んんんんんんんん!!!!


どんだけ力を入れてもなにも変化はない。


ん?なんか変な音がする?上から?


ザクザクッ ザクザクッ


やがて、暗闇から光が差し込む。


あっ、ちょっと体が動く。今度こそは


んんんんんん!!!あっ!いける!


体が動いた。手が光に届いた。そのまま体をぐっと上に力を入れる。


ドサドサっと音ともに地上にでた。


え?地上?

下を見る。大きな穴、土。


周りを見るとお墓がいっぱい並んでいる


何私、埋められてたの?いじめもここまでくると笑けてくるわ。


あれ?ここにスコップがある。誰かが私を掘ったってこと?


界隈を見渡すも、それらしき人物が見当たらない。


一体誰が...?


まあ、いいや、とりあえず歩こっと。


そう言えば私、土に埋まる前に何してたんだっけ?


記憶を辿る。


あっ、そうだそうだ。友達とお出かけしてたんだ。映画も見たりしたっけ。

今日も愛ちゃんと遊ぼっと。

あ、愛ちゃんの好きな食パンも買って行ってあげよう。きっと喜ぶだろうな。


まって、なんで私って埋められてたの?しかもお墓に。死んでもないのに。いじめられてもいない。

あれ?さっきまでその理由が分かっていた気がするんだけどな...おかしい、もうおじいちゃんだ。あっ間違えた、おばあちゃんだった。



なんでもいいや。お家に帰ろっと。
















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君と僕達の世界 池田蕉陽 @haruya5370

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