第11話 あの子、ゴスロリ着てるね

ああ、長かった。一日が長かった…。

一回家に戻って、それから廃校行って、それからショッピングモールに行こうっと。早く先生来ないかな…。

腕を突き上げ、唸りながら伸びる。


「あ、見て。梓ちゃん。あの女の子、誰か待ってるのかな? ゴスロリ着てるね」


…ゴスロリだと?

唸り声が止まる。


「小学生かな…って梓ちゃん早っ!?」


雪奈ちゃんの声がどんどん小さくなる。

自身最高速度だと自負できるくらいの速度で廊下を駆け抜けた。

私は校門に駆け寄り、例のゴスロリ少女を探す。


「いた! 碧流!!」

「お姉ちゃん!!」


いや待って。嬉々として抱きついてきてるけどちょっと待って。

なんでここにいるの? え?


「あのね、お姉ちゃんの家に引っ越ししてきたんだけど、家の鍵がなくて、ちはるたちとのじゃんけんに勝って私が呼びに来た!」


ツッコミ所が多すぎる!!


「え、引っ越し? え? 聞いてないよ?」

「うん! あのね、ちょっと前にとれじゃーずのナントカさんが来てね」

「はあ!? とれじゃーずぅ!?」


何、エゼルの野郎またなんかしに来たの!?


「ううん、えぜるじゃなかった。け…け…けい?」

「慧音、な。碧流」


頭上から降ってくる、無気力さんの怠そうな声。


「姉貴ぃ、鍵ちょーだい。いい加減千春が不審者扱いされるー」

「それは困るね。…って、慧音って何?」


ため息一つ溢して、遥希に鍵を投げ渡す。

まあ、廃校まで行く手間が省けたからいいか。


「うんとね、はるきに似てた!」

「碧流、俺が悩んでたこと言わないで」


わっと顔を覆って泣いたふり。

あー…よく寝てるのかな? 眠そうなのかな?


「あとね、つんってしてキリッて!」


ごめん碧流。それはわからない。


「あ、そうそう。文化祭の買い出しでショッピングモール行くから、手伝ってね」

「お。姉貴とデートできる?」

「刺すぞコラ」


ぱっと顔を上げる無気力さん。

何がデートだ。文化祭の買い出しだよ。


「お買い物?」

「うん。みんなで行こうね」


ぱあぁっと顔を輝かせる碧流。

私は頭を撫でた。


「あれ? 俺と対応違くない?」

「はい、帰った帰ったー。一回私も家に戻るから、待ってて」

「…りょーかい」


不満気に口を尖らせ、鍵を宙に放りながら碧流とともに歩いていく。


「ちょっと、剣木さん!?」

「あ、ごめん!」


野田さんが私を呼びに来たようで玄関から飛び出してきた。


ふと、碧流達が歩いて行った道を振り返る。

立ち止まっている二人。無気力さんが、見た事ないくらい怖い目で、こちらを見ていた。

碧流は心配そうに彼を見上げている。


「…? はる」

「早く! みんな剣木さん待ちだよ!」


野田さんの声に引きずられるように、私は校舎内に入った。


無気力さんは、こちらを睨んだまま。

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秘密結社のお姉様!? 折上莢 @o_ri_ga_mi_

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