かかし編
第7話 梓〜? ただいま!
「お姉様あああああっ!」
「うるっさい千春! 叫ばなくても聞こえるから!」
私がLancelotのリーダーになると宣言してから早一週間。何となくわかってきた事がある。
まず初めに、先程叫んでた千春。
彼女、本当にお淑やかじゃない。見た目詐欺だ。
私を一目見ればお姉様と叫んで走ってくる。さながら犬だ。しかも用はないらしい。
「うぅっ…ちはるぅ、うるさいよぅ…」
私にくっついて涙声で言う碧流。
最初はあんなに怯えてたくせに、今となっては片時も離れないと言っていい。離れない。何をするにも隣にいるか、足か腕に纏わりついている。呼び方はお姉様からお姉ちゃんになった。うん、それは嬉しいけども。
怯えられて…最初ちょっと傷ついたのに。
「うるせえよ千春! 姉御見た途端叫ぶんじゃねえ!」
手に持っていたダンベルを投げる勢いで食って掛かる烈。
彼は比較的常識人だ。…偶に壊れるところを除けば。
壊れると私に抱き付いて離れない。何もできないから止めて欲しい。それ以外は常識人だから大丈夫だけど。
呼び方はお姉様から姉御に進化。
「烈も大概だよ〜…、ふあぁ…」
最後に、呑気に欠伸をする無気力さんもとい遥希。
最近遥希って頭に浮かぶより先に無気力さんという単語が出てきてしまうので無気力さんと呼んでしまう。
まあいいか。口に出したら失礼だけど。
こいつはもう絶対常識人とは呼べない。
身長が高いのをいい事に私の頭を撫でてくる。小さいと言いたいのかそうなのか。殴るぞ。
呼び方はお姉様から姉貴へ。きっと無気力さんの方が年上だろうけどいいのかな。
「ていうか…、私が来てもう一週間になるけど、秘密結社って何するの?」
先程まで読んでいた本を閉じる。
顔を上げると、何故か全員が目を逸らした。
そう、碧流まで。
「…つまり、何もしないと?」
「い、いいいいいいいえ!? ありますよお仕事! ええ、ありますとも!」
それないって取っていいかな?
「仕事、ないよ?」
「碧流っ! そういう事言わないで下さい!!」
うん、ないんだね?
そうか、ないのか。なら大丈夫かな?
「私、明日から学校の文化祭準備期間で帰ってくるの遅くなっちゃうんだけど」
時が止まった。全員がぴたっと静止する。
「えっ…文化祭?」
「うん。うちの高校毎年この時期に開催するんだよ。今年は手の込んだものやるから、準備に時間がかかるんだよね。」
確か今年は創立五十周年で、盛大にやるんだ。
留学生もこの時期に合わせて帰国させられる。だから、私の友人も帰ってくるっていう事。
今イギリスに留学生している私の友人、
彼は私の幼馴染でナンパ一筋うん十年を数える奴だ。
まあいいやつなんだけどね?
「お姉ちゃん…、明日から一緒にいられないの…?」
「うん…まあ私も学校だし。昼間は一緒にいられないかな。帰ってくるのも何時かわからないし」
「駄目だよ。俺が認めない」
無気力さんいつ私の前にいらっしゃったんですかもしかしなくとも能力使ったでしょねえねえねえ。
認めないってお前誰気取りだよ!
「だって姉貴がいないと俺寝ちゃうもん」
「いや私がいたって寝てるだろ」
拗ねたように頬を膨らませるな。女子か。
しかも“もん”って! 私でも滅多に言わないよ!?
「遥希! お姉様に近いです!」
「離れろ馬鹿!」
烈と千春に引き離される。
ありがとう二人とも、本当に。
「取り敢えず! 私は文化祭の準備に徹しなきゃいけないの! それに、“あいつ”が帰ってくるから家にいないと…!」
駄目なんだよ、と叫ぼうとした途端に携帯が鳴り出す。
うっすら額がじめってきた。嫌な予感がする。
とりあえず、通話ボタンを押した。
「も…もしもし」
『あっ、梓〜?ただいま!』
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