第6話全てを巻き込んだ兄妹喧嘩を始めようか

「…」

「で?エゼル様。どうして暦は不機嫌なんです?」


薄暗い地下部屋。暦が体育座りしているソファーも、暖炉も、絨毯も。全てが豪華と言える。

Lancelotとの戦闘を終えたエゼルと暦は、とれじゃーずの基地に戻ってきていた。


「エゼル様が私にあんなこと命じなければ、お姉ちゃんはとれじゃーずに入ってたんです」


むすっとした表情のまま、エゼルの方を見ずに言う。

エゼルの隣に立っていた、枕を小脇に抱えた青年が溜め息を吐く。

エゼルは反抗するように頭を掻いた。


「仕方ないだろう。とれじゃーずで洗脳系は暦しかいないのだから。」

「むしろ慧音けいねが行けば良かったのよ。」

「いや僕はほら、寝てたから」


からかうように枕をくるくるとジャグリングのように回す慧音。

暦はまたむすっとして膝に顔を埋めた。


「ああ…お姉ちゃんに嫌われた。絶対嫌われた。エゼル様の所為だ。慧音ホットケーキ作って」

「えー。暦、文句言うじゃん」

「お姉ちゃんのが一番なの。でもお腹すいたから食べてあげる。早く作って」


ぶちぶち文句を並べながら早く早くと急かす。

慧音は肩をすくめて台所へ向かった。

エゼルはその光景を見て微笑み、天窓の下へと向かった。


「ようやくあちらも駒が揃った…。…さあ、全てを巻き込んだ兄妹喧嘩を始めようか」


地上の光に照らされた地下部屋の一角で、エゼルが不気味に笑った。

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