第5話 秘密結社のリーダーなんて初めてなんだから

そうだ、謝らなきゃ。


「あの…ごめんなさい。八つ当たりしちゃって…」


千春と烈さんはきょとんと顔を見合わせ、ああ、と頷いた。


「いいえ。私の方こそ失言でした。…でもお姉様。私たちは諦めませんよ。貴女こそ、我らのリーダーに相応しいのですから」


また目が真剣になる。


「…私、ならないとは言ってないけど。」


確かに無理だとは言ったけど、やらないとは言ってない…はずだ。

千春が目をまん丸にした。


「正直、私にリーダーなんて役職務まらないと思う。でも腕は剣になっちゃうし、妹は敵対組織にいる。それに…、エゼル相手じゃ分が悪いんでしょ?」


烈さんは炎。エゼルは水。明らかに烈さんの方が分が悪い。


「では…本当に…?」

「その代わり、やる事は教えてくれないとわからないよ。秘密結社のリーダーなんて初めてなんだから」


自分で何を言ってるのかわからなかった。

秘密結社?リーダー?お姉様?

まだわからないことの方が断然多い。

それでも。

恐怖、絶望、悲哀で埋め尽くされた私の心を救ってくれたのは、この四人で。

この人たちなら、必ず私の元に帰ってきてくれるんじゃないかって思えた。

一緒にいたいと思ったから。


「勿論ですお姉様!私が手取り足取り教えて差し上げます!」

「え〜?千春はお姉様に何も言わずに拉致った前科があるから駄目だよー。俺がやっとくから安心して〜」

「は?お前なんかもっと駄目だろ。絶対サボるし。俺がやるから他はいい。」

「だっ、だめ!れつ、おねえさまに酷いこと言うからだめ!わたしがやる!」

「「「碧流はできないだろ(でしょう)!?」」」


三人に怒鳴られた碧流が涙目でこっちに駆けてくる。

私はジト目で言ってやった。


「…可哀想」


碧流は腹部に抱きついてすりすりしている。

それを見て、三人は悔しそうにこっちを見ていた。

まあ…碧流可愛いしなあ。敵意剥き出しにされても困るんだけど…。

何処かで鳥が鳴いた。

味気ない、平凡な日々はいとも簡単に崩れ去り、私に訪れたのは非平凡とも呼べる今日だった。


「碧流、離れなさい!」

「やっ!」

「碧流が懐いた…!?」

「いやあ、流石“お姉様”だね〜」


私、剣木梓。高校二年生。

秘密結社Lancelotのリーダー格である、“お姉様”に就任致しました。

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