第5話

深くゆっくりと息をする。 吸って……吐いて……吸って……

心臓がトクントクンと、鼓動を打つ。

とても静かに。


遠くから、切れ間のない振動音が聴こえてくる。

すこし頭痛がする。

キュゥと頭を締め付けられたような……


掌を動かそうとしたが動けない。

意識が遠く昇りつめる。


懐かしい、ざらざらした感覚や、内側に堅い物を含んだ柔らかな感覚と触れ合いながら、上へ上へ上昇して、下の方に記憶やら、ごちゃごちゃとした感情を、置き去りにして、ピーンと張った糸のような細い細い意識のトンネルを、ゆっくりと、やがて速度を増して時空の先へ、ずっと先へ。


胸にすこし痛みを覚える。

ふいに辺りが真っ暗になって、一瞬後、私は宇宙になった。

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