第6話 突然の告白

喧嘩の相手の中に、貴志がいた。


その事もあり、街中でその話が広まってしまった。


まるで武勇伝を語るかのように、自慢げに何かある度に、その事をクラス中に話まくっていた。


そんな僕が暗い顔をすると、薫はリュックから、サッカーボールを、取り出し、転がし立ち上がった。


彼女は小学生の頃、北海道でも選抜に選ばれるほどの能力を持っていた。リフティングをさせれば、右に出る者はいない。


「ライト!久々に一緒に蹴ろうよ!」


笑顔でそう言うと、ベンチに根を張ったような重たい腰を上げる


「…うん」


と答えた。


インサイドキックと言うところで、ボールを蹴る。しばらく蹴っていると、だんだんと夢中になっていた。


特に何か会話することはない、ただ、彼女とボールを蹴っているだけなのに、何故か会話をしているかのような、錯覚になっていた。


(やっぱり、上手いなぁ薫ちゃん…)


そう思っていた時、蹴ったボールは大きく逸れてしまった。しかし、そんなボールも、彼女はいとも簡単にトラップする。


「へたっぴ〜」


そう彼女が、笑顔で言うと、僕はついムキになって


「仕方ないだろ!素人なんだから!」


そう答えた。


それを見て薫は驚いて、大きな笑顔で僕に言う


「あははは!あのライトが、ムキになってる。初めて見たよ!」


「あっ、ごめん…」


「んーん。仕方ないよ、初心者なんだし」


すると、彼女は得意のリフティングを披露する。


肩、頭、腿など、色んなところを使ってリフティングをしていた。


(何度も見てるのに…やっぱりすごいや…)


僕は感心する…


「よっと…」


そう言うとボールを手に持ち、僕を見た。


その姿は、夕日をバックにした為か、とても輝いて見えた。


「ライトさ、夏休みどうするの?」


彼女は、真剣な表情で、僕に問う。


「ぼ、僕は…」


「うん」


「特に何も決めてないよ…」


そう言うと、彼女は再び笑い出した。


「あはは!そんなことだろうと思った」


「わ、笑う事ないじゃないか!薫ちゃんこそ!何かあるの?!」


そう言うと、彼女は頬を赤く染め、覗き込むように僕に言ってきた。


「んーん。特に何もないよ。強いて言うなら、誰かさんとお祭りに行きたいなって思うくらいかな…」


その時、僕は『誰か』と言う言葉に引っかかった。


「そっか…その人と上手く行けばいいね…」


何故か、僕の心はモヤモヤとした気持ちにさせられた。


「ねぇ、ライト?」


「…」


僕は黙り込んだ。再び彼女は覗き込むように見てきた。


「『誰かさん』ってね?」


「…」


「…」


彼女も黙り込む、少しだけ時間に間が空いて、僕は頬を赤く染めて生唾を飲み込んだ。


「それは…」


僕は拳を握った。







「君のことだよ?」






その言葉を聞いた瞬間、僕は驚いた。


「…えっ?」


(ぼ、僕?)


すると、彼女はモジモジと恥ずかしそうに下を向き


「は、恥ずかしいからさ、に、2度も言わせないでよ」


彼女は頬を赤く染めて、手を後ろに組み下を向いた。


僕もまた、顔が真っ赤になり、声が黙ってしまった。


「ぼ、ぼく?!」


そう言うと、彼女は頷いた。


一瞬、僕は耳を疑った。見ているこの現実も、何かの冗談かと思った。


そして、僕はこれは実は貴志達の罠では無いかと頭を過ぎった。



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