第2話花見の中で
にぎやかに笑い声が響く宴の席に飛び込びましたが、少女が突然現れたことに驚いたようです。しんと静まり返った周りの様子に少し悪いことをしたような気がしました。それから、すぐにぎょっとして後ずさりをします。
朱色の織物が敷き詰められ、くつろいだ様子を見せながらも宴会にいる人たちの衣服が少女にとって変わったものに見えたからです。薄い青色の着物に濃い半纏のようなものを着た青年は腰元までのびた艶やかな長い黒髪を後ろにまとめ、手には盃を持っていました。
そばに座っている着物を着たおばあちゃんが、青年の盃に何かを注ごうとしたところだったようで、ぴたりと手をとめて少女の顔を不思議そうに眺めています。他にも薄いピンク色の衣服を着た少女や女の人がいましたが、仙女や天女のようで少女は頭がくらくらしました。
「一体どうしたんだ?顔が真っ青だが」
盃を置いて座り直し、少女に問いかけてきた青年に少女はドギマギしながら答えます。
「あの、誰かに追われてるみたいで。ここにしばらくいさせて下さい」
しどろもどろと不審者が追ってきたことを訴えてしばらくの間ここにかくまってほしいと頼むと、青年は首を傾げました。
「このあたりに妙な者はおりませんよ」
首を傾げておばあちゃんが言いましたが、青年は少女のただならぬ様子ににっこり笑いました。
「それなら、しばらくここにいると良い」
青年の言葉にうなづいたものの、本当にここにいて良いのだろうかと思いながら敷物の隅っこに腰をおろしました。
「そんな遠くに座らなくても」
「いいんです。しばらくの間ここにいさせてもらえれば」
親切にもっとこちらにいらっしゃいと言ってくれる青年とおばあちゃんに、勢いよく首をぶんぶんと横に振ります。ここにいる人たちを妙に思っているなど、口が裂けても言えません。そわそわとしながら時間が経って、早く自分を追ってきた者がいなくなってほしいと願っていました。
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